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第2章  実務編 (3)作業環境

Q35 職場と同程度の環境となるような配慮
職場と同じ環境が在宅勤務者の作業環境として必要と思いますが、特に重度の障害のある在宅勤務者では、温熱環境についてどのような配慮が必要になってきますか?

A35

 最近では、住宅内においても冷暖房設備はごく当たり前のものとなり、その機器も充実してきました。これらの温熱環境が作業効率や健康に大きく影響することは言うまでもありません。身体に重度な障害のある人にとっても仕事を健康に長期に行う上ではたいへん重要なことです。 
 例えば、頚髄損傷者や脊髄損傷者は外気温の変化にすばやく順応することが困難ですし、脳性麻痺者のように不随意運動で発汗が多く体力を消耗する人、さらには神経筋疾患や慢性リューマチ者など冷暖房が身体の負担を少なくするために必須な人も少なくありません。このようにどのような障害かによって冷暖房の設備は多少違ってきますが、身体に無理のない冷暖房設備を初めに検討されるのがよいでしょう。 
 換気や照明への配慮も一見すると忘れがちですが、作業効率や疲労に影響を与えます。呼吸により身体の中の換気量が低下する者やアレルギー体質の人にとっては、換気は健康面で特に重要です。コンピュータ関連の作業室を例にとって説明しますと、OA機器の中には冷却のためのファンを内蔵して埃を舞い上がらせるものやレーザープリンタのように粉体トナーを空気中に排出するものなどがありますので、できるだけ埃を除去する機能のある機器類を利用することをお奨めします。照明には部屋全体を照らすものと作業面を照らすものの2種類があります。作業面を照らす照明については外との明るさの差やディスプレイのぎらつき、姿勢の変化にこまめに対応できると目の負担も少なくてすみます。ここでも本人ができるだけ操作しやすいように工夫するとよいでしょう。 
 このように、職場と同程度の環境は在宅勤務の場合も必要となってきますが、ほとんどの場合は生活の場でもある住宅にはこのような設備は準備されています。ここで問題となってくることは、光熱費など費用をどうするかということです。これは入社時に覚書きでも良いですからきちんと文書にして、双方が納得いく取り決めをしておくと後々のトラブルを未然に防ぐことができるでしょう(Q28参照)

 

コラム2-45

【事例】 (1)光熱費の支払い

 社内システムの開発やDTP業務に取り組んでいる筋ジストロフィー2級のP氏が勤める大手ソフトハウスでは、P氏の作業室の環境を当初から考慮し、会社と同程度の環境にしています。また、そのための光熱費も取り決めにより支給しています。
[A社のヒアリングより]

コラム2-46

【事例】 (2)照明

 仕事に使うワークステーション、ワープロ、パソコン、プリンタ、FAX機能付きコピー機など多くの機器が設置されているため、家庭用とは別に60アンペアの電気容量で契約しています。照明は500ルクスあります。 
 また、冷暖房も完備されています。電気回線工事・照明・空調設備等は設計段階から会社が関与し、それらの費用は会社負担で行いました。
[C社のヒアリングより]

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