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第1章  解説編 障害者の在宅勤務の状況について

Q3 海外で在宅勤務を取り巻く状況はどうなっていますか?

A3

在宅勤務などのテレワークは、欧米などの海外においても普及しています。特に、アメリカはテレワーク先進国であり、1999年以来毎年アメリカテレワーク協会(ITAC)がAT&Tの後援で調査を実施しています。また、公共部門における導入が進んでいると言われており、ここではアメリカ連邦政府におけるテレワークの取り組みについて紹介します。

【アメリカ連邦政府のテレワークの現状】

  • 1 テレワークの法制化
    • 連邦政府では、1990年代初等からGSA(General Services Administration、総務庁)が主導権をとってテレワークを推進してきた。テレワーク実施者がなかなか増加しないという問題を抱えていたため、2000年10月のPublic Law で、各省庁にテレワーク実施が義務づけられた。
    • この法律では「連邦政府の各省庁は、従業員の生産性を低下させずにテレワークに適格と思われる従業員を最大限テレワークさせるためのポリシーを策定しなければならない。この法律が施行されてから6ヵ月以内に、適格者の25%がテレワークを実行し、その後各年ごとに25%ずつ拡大して行かねばならない」ということが規定され、条文通りに読むと2004年には適格者の100%がテレワークをしなければならないということが定められた。
  • 2 テレワーク推進の背景
    • 連邦政府がテレワーク推進をはかっている理由はいくつかあげられる。
      • 1 交通混雑緩和:首都ワシントンDCの朝夕の道路の混雑はかなり激しく、テレワークによって交通混雑を緩和させようという考え方。
      • 2 環境問題への対応:上記交通混雑とも関わるが、通勤に使われる車を減少させることによって、排気ガスを削減しようという考え方。
      • 3 公共工事の削減:道路の混雑が進むと、新たな道路や橋を建設することが必要となり、連邦政府の公共工事が増加してしまうため、テレワークによって混雑を回避し、そのことによって間接的に公共工事を削減しようという考え方。
      • 4 危機管理対策:9.11以降、災害やテロなどが発生した際に、業務を継続できるような仕組みとしてテレワークを位置付けるという考え方。
      • 5 ファシリティコストの削減:テレワークの導入によるオフィスコストの削減。
      • 6 人材の確保:我が国と異なり、アメリカの政府部門は常に民間企業との間で人材確保の競争を行っているため、働く環境を整えることで、優秀な人材を長期間にわたって確保しておきたいという考え方。
  • 3 テレワーク実施の状況
    • Public Law により2004年までに、各省庁が選出したテレワーク適格者の100%を実施に移行させるとなっているものの、2003年半ば時点での実施比率は、適格者の10%程度にとどまっている模様である。
    • 実施比率が上がらない理由としては、マネージャーに長年蓄積された「組織文化」の変革がなかなか思うように進まないことが最も大きな原因として指摘されている。つまり、アメリカの連邦政府ですら、「目の前の管理」という従来からの組織論理を変革することが容易ではないということであろう。

【ニューイングランド地域におけるGSAのテレワークの現状】

  • 1 テレワーク推進組織
    • テレワークプログラムを推進するための特別委員会が設置されている。委員会は、テレワークの定義、適用される法律、テレワークに用いる情報技術などについての検討を行い、参加者を増やすための戦略づくりを行った。
  • 2 テレワーク導入前の調査
    • 従業員とマネージャーに対して、導入前の意向調査を実施した。従業員の多数はテレワークを希望したが、マネージャーの中には抵抗感や疑念を持つものが多数みられた。
  • 3 パイオニアプログラムの実施
    • マネージャーの抵抗は依然としてあったが、テレワーク実施者のパフォーマンスが低下するような場合には、テレワークを中止するという前提条件で、マネージャーを説得してプログラムをスタートさせた。
    • 結果的には、パイオニアに選ばれた人達のパフォーマンスは低下することなく、反対していたマネージャーは、テレワーク実施者は実施以前に比べてよりハードに仕事をしていると報告している。
    • 本格実施の段階においては、こうした反対意見を持っていたマネージャーが、テレワークの強力な推進者になっている。
  • 4 自分の仕事を見直す機会
    • ニューイングランド地域のGSA職員は、パイオニアプログラムの実施に先立って、自分の行っている仕事の内容を見直す機会を与えられた。
    • このミーティングでは、自分の仕事の内容は何か、その仕事を行うのに必要な情報技術は何か、その仕事はオフィスでないとできない仕事か、災害などが発生した時にどのような対応策が考えられるか、などをグループ単位で議論することが行われた。
    • その結果、自分達が行っている仕事は「時間と固定的な場所」だけで行うことには向いていないことに気付き、テレワークでできる仕事の計画を行うことになった。各グループは、自分達の仕事の内容ややり方に向いたテレワークはどのようなものであるかを検討し、テレワーク実施のプランづくりにまで発展した。
  • 5 テレワークの効果
    • 導入後1年経過した時点での効果としては以下のようなものがあげられている。

    • *ある部門では、収入が前年に比べて15%向上した。
      *パフォーマンス向上や地球環境への対応などに関する各種の表彰を受けた。
      (出典 社団法人日本テレワーク協会「テレワーク実施事例集」抜粋)

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