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第1章  解説編 障害者の在宅勤務の状況について

Q2 日本で在宅勤務を取り巻く状況はどうなっていますか?

A2

 IT技術を活用することにより、会社のみではなく、自宅や色々な場所で働くことができる、新しい業務形態が創出されました。つまり、時間や場所に関係なく業務遂行が可能になったわけです。これをテレワーク(テレ=遠隔、ワーク=働く)といいます。在宅就業が広がりを見せてきたのは、このようなテレワークの進展によるものであり、そのためには、IT基盤を整備することが不可欠となります。
日本では2001年にe-Japan戦略のもと、政府の方針としてIT基盤の整備に取り組んできました。これによりインターネットは広がり、高速通信網も飛躍的に拡大しました、このような状況のもとで、2003年度にはIT戦略本部がe-Japan戦略Ⅱを策定しました。e-Japan戦略Ⅱでは、21世紀にふさわしい社会として「社会全体が元気で、安心して生活でき、新たな感動を享受できる、これまで以上に便利な社会」とし、その中の「先導的取り組みの7分野」および「IT社会基盤の整備」で実現したい事を「具体的な数値目標」を明示しています。7分野の中には「就労・労働」という項目があり、ここでは電子的手段で情報を入手し職を得る人が2005年までに年間100万人、テレワーカーが2010年までに就業者人口の2割にするなどを掲げています。このように、テレワーク環境はさらに良好な状況へと変わりつつあり、在宅就業にも追い風となっています。なお2002年時点におけるテレワーク人口推計値(週8時間以上テレワークを実施)は、雇用型テレワーカー311万人、自営型テレワーカー97万人で合計408万人となっており、雇用者及び自営業に占めるテレワーカーの比率はそれぞれ5.7%、8.2%です。

以下にテレワークを実施している企業の事例を紹介します。なお、この事例は日本テレワーク協会刊「テレワーク実施事例集」の1部をご紹介するもので、詳細は同誌をご覧下さい。

日本におけるテレワーク実施企業の事例

会社名 旭硝子株式会社
所在地 東京都
業種 ガラス製造業
資本金・従業員数 約900億円/約6,300名
テレワーク実施状況
  • 同社は2001年4月1日に、それまで全国6ヶ所にあったガラス事業部の支店を廃止し、支店に代わって本社内の販売グループが全国の営業活動を一括して管理する体制に移行した。
  • 支店の廃止にともない、全国の20数名の営業スタッフが、自宅から顧客先に直行直帰をするモバイル勤務に移行した。
会社名 アップルコンピュータ株式会社
所在地 東京都
業種 コンピュータ機器の製造販売
資本金・従業員数 約54億円/約500名
テレワーク実施状況
  • 同社は1997年にテレワークを制度として導入した。
  • 導入後わずか6年のうちに、ADSLを始めとするテクノロジーが想像以上に進歩・普及したことも大きくプラスに働いている。自宅からでもオフィスにいるのと同じようにサーバーにアクセスでき、データのやりとりもまったく不自由がないように、各自にセキュリティカードが貸与されている。
  • 最近開発されたテレビカメラiSightも、書類の文字が読めるほどの高画質を実現して、今後のテレワークの可能性をますます広げるものと期待されている。
会社名 日本IBM株式会社
所在地 東京都
業種 コンピュータ機器の製造販売、情報システム、ソフトウェア、ハードウェア、コンサルティング、その他IT関連の製品、サービスによるソリューション提供
資本金・従業員数 約1,353億円/20,000人以上
テレワーク実施状況
  • 日本IBMはいち早く営業系にモバイルワークを導入したことでも、テレワーク実施状況には先進的な取り組みをしてきているが、2001年には「e-ワーク」と呼ばれる、在宅勤務制度を導入した。
  • 同社のe-ワーク制度は、IBMが世界的な規模で展開しているワーク/ライフ・バランスを提供していくという戦略の一環であり、仕事と生活の両立を可能とすることによって、社員の能力を継続して十分に発揮できるような環境を提供することに主眼がある点が重要である。あわせて、同社が推進しているe-ビジネスを自ら実践し、勤務場所や勤務形態に柔軟性を持たせるワーク・フレキシビリティの実現や向上を目指したものである。
  • 2002年12月の時点で実施者は約2,000人である。多くの人は1週間の内1~3日、もしくは1日のうち一部の時間をe-ワーク(在宅勤務)するというパターンであるが、フルタイム在宅で仕事をしている人もいる。e-ワークは管理職も適用対象であり、課長や部長クラスの利用者も多い。
  • 子どもの夏休み期間だけ半日e-ワークするという社員もみられ、e-ワークはライフだけでなく、季節によっても使いわけがある。
会社名 日本オラクル株式会社
所在地 東京都
業種 ソフトウェアプロダクトの販売及びソフトウェアプロダクトの利用を支援する各種サービスの提供
資本金・従業員数 約220億円/約1,400名
テレワーク実施状況
  • 2001年から、在宅勤務制度を試験的に導入、2004年度まで正式導入の可否について検証を行ってきた。
  • その結果、業務運営上、特に支障がないと判断され、2004年9月に就業規則を改訂し、正式に在宅勤務制度を全社展開することとした。
  • これは「会社への通勤による業務」という従来の枠組みにとらわれず、「場所を問わない勤務制度」=「Work @ Everywhere」いうコンセプトに基づいており、在宅勤務に関する規程は「Work @ Homeプログラム規程」と称している。
  • 「Work @ Homeプログラム規程」では、通常勤務をしている中で、特定の日を在宅勤務とするType Bと、育児・介護・障害・傷病などの事由に配慮したType Aの2種類の規程がある。
  • Type Aの場合は、各事情に応じた業務量の軽減がある。
  • 現在の実施状況は、以下の通りである。
    * 対象部門:全部門
    * 制度利用実績:約150名(2005年5月実績)
  • 現在、大きな障害も無く運用できていることから、本制度利用者は、今後増加していく見通しである。
会社名 日本電気株式会社
所在地 東京都
業種 コンピュータ機器等の製造販売
資本金・従業員数  
テレワーク実施状況
  • 同社については、ビジネスとして展開しているITシステムについての調査を行なった。これらは、実用化可能で、かつ最先端のシステムをデモブースにも展示している。テレワークを実施するに当って、参考になるところが多いと思われる。
  • なお、同社は営業・SE系のスタッフにモバイル勤務を導入している。
会社名 富士通株式会社
所在地 東京都
業種 コンピュータ機器の製造販売
資本金・従業員数 約3,200億円/約34,000名
テレワーク実施状況
  • 一部事業所において、本部長・事業部長の約30人を除く社員約4,000人全員が固定席をもたないフリーデスク制(ノンテリトリアルオフィス)とし、イス席数は社員数の約70%とした。
  • 社内はユビキタスワークプレイスと称しているが、実質は社内テレワークを導入。
  • 勤務している人の多くはモバイル勤務を実施している。
  • 制度化は行なっていないが、健康上の理由などにより通勤が困難なケースについて、個別に適用している。
    (1)継続的な勤務を可能とする勤務形態
    (2)専門性の高い人材の確保
    (3)成果を上げやすい環境の提供
    という本人と会社の互いのニーズに合致するしくみとして導入。
  • 在宅勤務については、有効性は会社として認識しているが、企業としての制度化は今後の課題であると考えている。
  • スタート当初は座席が不足気味であったが、その後集積もなくなり、デスク数は充分足りている。
会社名 マイクロソフト株式会社
所在地 東京都
業種 コンピュータソフトウェア及び関連製品の営業、マーケッティング
資本金・従業員数 約5億円/約1,100名
テレワーク実施状況
  • 同社の社内IT環境は、早い時期から全社員が日常の業務で電子メール、インターネットアクセス、社内LAN上のデータを自由に活用できるように整備されており、日常のコミュニケーションは、国内外や社内外を問わず電子メールシステムとボイスメールシステムが主要ツールとして活用されている。
  • さらに、社内のみならず、国内外の出張先や社外においても高度なセキュリティ管理システムの元、自由にネットワークにアクセスし活用できるIT環境が整備されているため、世界のどこの場所にいてもオフィスにいるのと遜色がない仕事環境が提供されている。

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