在宅雇用 企業事例② 国際紙パルプ商事株式会社 http://www.kppc.co.jp/ 中途障害の社員だからこそ活かせる、信頼関係と能力 社員が中途障害となるケースは多く、どうやって在宅雇用をしていけばいいのか悩まれている企業も多いようです。 国際紙パルプ商事はまさにその事例で、キャリアと実績のある中途障害の社員を在宅雇用に移行し、成功しています。 1999年に日亜と合併、社名も大永紙通商㈱から国際紙パルプ商事㈱に改め、グローバルな経営戦略を進めている企業です。 その未来を担うのが社員であり、人材育成にも力を入れています。経験を積み、能力を磨いた社員は会社の財産です。 そこで新たな試みとして、中途障害者となった社員を在宅勤務として継続雇用、社員と会社がともに成長する形を模索しつつ、 新しい可能性にチャレンジしています。 名称:国際紙パルプ商事株式会社 創立:1924年12月 事業内容:紙、紙製品、パルプ、古紙及び関連商品の売買・輸出入 所在地:東京都中央区明石町6-24 TEL:03-3542-4111 FAX:03-3542-4282 ホームページ:http://www.kppc.co.jp/ まずはしっかりした受け入れ体制を整えること ▲人事グループ グループ長 谷口和久さん 在宅雇用の安達文洋さんはキャリア32年のベテラン社員。5年ほど前に視力障害で通勤が困難になり、 2002年7月から在宅雇用に移行しました。 初めての経験ゆえ、福祉機器の知識や準備、費用の負担など在宅雇用に必要な要件を公的機関に相談しながら決めていきました。 就業規則にも条項を追加し、細則も作成。「まず受け入れ体制をきちっと整えることが大事です。 それから業務をどうするかという問題ですね」と人事グループ長の谷口和久さんは言います。 以前の配属先だった海外事業部と人事部との相談で、安達さんの長いキャリアと経験を活かせる業務は何か。 海外駐在員の経験もあるので、その英語力を活用できないかと考えた末、スクリーンリーダーを使えば翻訳業務が可能だと思い至りました。 「海外事業部の月1回の会議にも出席してもらい。アドバイスをしてもらっています」と人事グループ参事の佐伯充さん。 社員としてのキャリアや経験を生かした業務を新たに創り出す柔軟な対応は参考になります。 会社に貢献する姿勢と行動力を重視 こうした受け入れ体制2〜3ヵ月で作り上げたそうですから、驚きです。 もちろん、会社側だけでなく、国立障害者リハビリテーションセンターの病院に短期入院を繰り返しながら、 白杖を使う生活訓練を行い、そしてパソコン技術の習得にも励むという安達さんの努力も大きいといえます。 また最近では安達さんが自己投資として約二年前に産業カウンセラーの研修を受けたことをきっかけに、 人事部と厚生部でメンタルヘルスケアのプロジェクトを、本年にも立ち上げることになりました。 佐伯さんは「当社でもメンタルな症状を訴える社員が増え、対応策が必要と思い始めていた矢先でした。 安達さんの発案のおかげですよね」とキャリアのある社員の継続雇用のよさを改めて実感しています。 ▲正面玄関 雇用の現状 在宅勤務の経緯 中途視覚障害者の継続雇用の対応 在宅就業者数 1名 障害の状況 網膜色素変性症による視力障害(障害者手帳1級) 身分 正社員/人事グループ所属 雇用契約 月給 勤務時間 9:00〜17:15(12:30〜13:00昼休憩) 業務内容 ・海外情報誌の翻訳及び分析      ・海外営業経験を活かした若手営業担当者へのアドバイス コミュニケーション方法 日々の業務依頼・報告・連絡は電話及びメール、在宅勤務日報を翌月1日に提出、月1回以上の出社 在宅雇用の留意点 ・会社情報の伝達          ・業務上使用しているパソコン機器等、音声対応ソフトのメンテナンスと迅速なサポート体制 PICK UP!−受身ではなく提案すること、それが何より大事です− ▲人事グループ 参事 安達文洋さん 網膜色素変性症(障害者手帳1級) 1973年に入社以来ずっと輸出入の貿易部門に携ってきたわけですから、まずその部門への支援が第一だと思うんです。 その上でお互いに話し合ってプラスのことを見つけていきましょうと暗中模索しながら、ようやく形ができつつあります。 なかでも信頼関係が築けていたことが大きいですね。業務に関しては、自分の何を活かすかということです。 私の場合は英語ができることで翻訳業務になったのですが、最初は何を翻訳していいのかわからない。 そのなかで何が会社にプラスになるかを自分で考えていきました。 産業カウンセラーをの講習を受けたのも、最初は趣味の領域でしたが、自分の障害を乗り越えながら相手の痛みもわかればいいなと。 それが自分の領域を広げ、会社の利益にもなるというのが大事だと思います。 ▲国際紙パルプ商事 WEBトップ画面 ここがPoint! ・受け入れ体制づくり  福祉機器等のハード面、業務を円滑にするためのサポートをするソフト面、ともに会社と在宅雇用者がよく話しあうことで、  信頼関係も築けます。 ・在宅雇用者の能力を 伸ばせる業務内容を  中途障害の場合、在宅雇用者の持っている能力と経験を見極めて活用できる業務を用意すれば、  それは会社のプラスになるということです。 ・仕事の環境をサポート  業務連絡、パソコン関係のメンテナンスとフォローも在宅雇用には必要不可欠。  当初は、システム系に携る社員が2名担当し、不都合な問題が生じた場合に迅速に対応していましたが、  昨年12月より外部委託しています。