第3章 障害者の在宅勤務、在宅就業を進めるために ・ 障害者の在宅勤務の特徴  障害者の在宅勤務は、一般的な在宅勤務とは異なる配慮事項があります。そこで、企業が障害者の在宅勤務を導入する際のプロセスとその特徴について、今回収集したケーススタディ及び「企業のためのテレワーク導入・運用ガイドブック」(社団法人日本テレワーク協会、2005)、「在宅による障害者の雇用と就労を進めるために」(日本障害者雇用促進協会、2002)を参考に図2のとおりまとめました。  本書に掲載されている在宅勤務事例では、以下に挙げられる特徴に対するサポートを支援団体が上手にコーディネートしています(支援団体がどのような支援を行っているかについては、P58の「Q3 在宅勤務を進める上で、企業の方に有効な助言は何ですか?」を参照ください)。 図2 在宅勤務導入のプロセスと特徴 「企業のためのテレワーク導入・運用ガイドブック」(社団法人日本テレワーク協会、2005)の「テレワーク導入のプロセス」を基に当機構が改変 在宅勤務導入のプロセス 1 導入の検討と経営判断 (導入目的の明確化) 2 現状把握 (在宅勤務に関連する制度等を把握する) 3 導入部門の検討 4 導入スケジュールの策定 5 導入部門の選定 6 導入部門に対する説明 7 導入部門に対する教育研修の実施 8 職務内容の決定 9 社内制度作成 ・勤務時間 ・賃金 ・定期出社の取扱い ・福利厚生 ・業務管理の方法 ・通信機器(メンテナンス含む)及び通信費負担の取扱い(助成金の活用) ・社内教育の取扱い ・情報セキュリティの確保  など 10 支援体制の整備 ・在宅勤務コーディネーター配置の検討(助成金の活用) ・コミュニケーション体制の確立 ・健康管理支援 ・相談窓口の設置 11 求人票の提出 ・職務内容 ・勤務時間、賃金等 ・面接 ・採用 12 在宅勤務の導入 支援団体の声 ○在宅勤務の場合、会社において勤務する場合よりも職場の人間からの声かけ等が少なくなるため、コミュニケーション能力が求められる。 ○会社において勤務する場合は、会社内に色々な仕事があるため、別の仕事を任せることが可能。在宅勤務の場合は一定のスキル習得が求められる。 ○雇い入れ当初から在宅勤務を始める場合、本人のスキルを信頼できるかがポイント。委託訓練やトライアル雇用を通じて業務に慣れてもらう、スキルを確認する方法もある。 13 導入後の問題点の把握 支援団体の声 ○在宅勤務の場合、自己完結できるような業務を任されることが多いので、遂行するための最低限のスキルを身につけることと、自己啓発によるスキルアップを図ることが求められる。 ○在宅勤務の障害者は生活環境に影響を受けやすく、仕事と生活を両立するための自己マネジメント力が必要となる。 ○在宅勤務の場合、会社において勤務する場合に比べ、仕事の流れ、自分の役割が把握しにくい。 14 問題点への対応、職場定着 障害者の在宅勤務の特徴 ○一般の在宅勤務は、ワーク・ライフ・バランスの視点から、育児、介護を中心とした生活の空き時間を活用したり、仕事の効率化を目指して導入する場合が多い。 ○障害者の在宅勤務は、移動が困難、日常生活で介助が必要などの理由で在宅でなければ仕事ができないというケースが多い。 ○また、障害者雇用率達成に向けた一方策となりうる。 ○障害者雇用率の算定を考えた場合、雇用保険の被保険者となるよう勤務時間を検討する必要がある。 ○定期的な通院、介護を必要とする場合があり、日中の介護の時間の取扱い等を定めた方が良い。 ○障害の状況に応じた機器の設定が必要。 ○会社員勤務の経験が少ない方も多く、ビジネスマナーを含めた指導が重要。 ○障害のために移動が困難な場合、採用時の研修をどのように実施するか検討しておくことが望ましい。 ○業務の打合わせや研修等出社の頻度を決めておくと良い。 ○移動が困難な場合、上司、同僚と会う機会が持ちづらいため、メール、電話、ネットミーティング等コミュニケーション体制を確保することが大切。 ○移動が困難な場合、面接場所、時間の設定に配慮が必要。 ○作業環境を把握するために、自宅訪問も重要。 ○疲労による体調悪化、長時間同じ姿勢をとることで発生しやすい褥瘡(じょくそう)、2次障害の予防が必要。 ○打合わせのための通勤など介助が必要となることがある(必要な介助が受けられないと仕事に支障をきたすことがある)。 ○仕事と私生活のリズムのつけ方について自己管理に関するサポートが重要。 ○外出が困難な場合、孤独感をもつことがあり精神面のサポートも重要。 ○在宅就業支援団体等、支援機関を活用しながらフォローアップができる。 障害者の在宅勤務、在宅就業を進めるために ・ ケーススタディから浮かび上がった就職支援のポイント Q1 障害のある方に対して、どのような技能訓練を行っていますか?  当機構が平成19年9月に実施した「障害者の在宅就業における就職支援に関するアンケート調査」結果によると、回答いただいた支援団体において「ワープロ・表計算等」(58.6%)、「ホームページ作成」(55.2%)の訓練を実施しています(図3)。 IT講習(ワープロ・表計算等) 58.6% IT講習(データベース) 20.7% IT講習(HP作成) 55.2% IT講習(CAD) 13.8% IT講習(DTP) 27.6% IT講習(その他) 44.8% IT講習【計】 86.2% 作業支援 48.3% マナー講習等就職の準備講習 34.5% 相談のみ 20.7% その他 20.7% 図3 支援団体が実施する訓練・講習内容 (回答団体数 28団体/複数回答)  また、収集したケーススタディからは以下の内容が報告されています。  表1 技能訓練の内容 ■ワープロ・表計算等 エクセル、ワード、アクセス ■インターネット関連 E−メール、HTML、フラッシュ、 ホームページビルダー、Webアクセシビリティー ■プログラム C言語 ■デザイン、DTP イラストレーター、フォトショップ ■CAD ■その他 テープ起こし、ケーキ袋加工、宛名シール貼り、 封入作業、折込作業 表2 訓練の方法 ■通所による集合訓練 支援団体が定める会場に通所し、集合で訓練を行う。 ■e−ラーニングによる訓練 インターネットを介して自宅などで個別に訓練を行う。 ■家庭訪問による訓練 週に1回程度、講師が自宅訪問し個別指導を行う。 支援団体の声 ○職場実習などの実践的な訓練が大切。 ○OJTによる講習のメリットは、実際の仕事を経験することで仕事の流れや納期を守るなど、緊張感をもって取組むことができる。 ○企業のニーズでパソコン技能がどの程度必要とするか確認することが必要。求められる技能を明らかにすることで、より実践的な講習を組み立てることができる。  基本的な訓練カリキュラム修了後、より実践的な力を身につけることを目標に、職場実習やOJTを取り入れている団体もあるようです。  また、訓練で習得したスキルを活かし、請負作業にたずさわることで納期への意識、仕事の対価として金銭をもらうことによる責任感の向上を目指すケースもあります。 Q2 障害のある方に対して、技能訓練以外にどのような支援(ビジネスマナーなど)を行っていますか?  在宅勤務や在宅就業を希望する方の中には、障害のために移動に制限があり、集合研修への参加や労働習慣の獲得が容易でない場合があります。  そのため、各支援団体においては技能訓練に加え、ビジネスマナーやコミュニケーションに関する講習を行っているところがあります。  56ページの図3「支援団体が実施する訓練・講習内容」をみると、回答いただいた支援団体の3割が技能訓練以外のビジネスマナー講習などを行っています。  収集したケーススタディからは以下の内容が報告されています。 表3 技能訓練以外の支援 ■電話、電子メールのマナー ■名刺交換の仕方 ■朝礼や会議の司会進行によるプレゼンテーション能力の向上 ■指示に対するメモの習慣化 ■報告・連絡・相談の重要性について ■仕事に対する意識(納期を守る、自己研鑽を行うなど) ■健康管理について ■在宅勤務や在宅就業を行う上での心構え ■雇用先企業の就業規則の理解 支援団体の声 ○障害のある方の働く意欲の向上、意識改革が大切。 ○在宅勤務の場合は、会社で勤務する場合よりも職場の人間からの声かけ等が少なくなるため、他者とのコミュニケーションが一層重要。 ○コミュニケーションが十分に取れない場合、支援者とクライアントとの打合せに同席してもらい、コミュニケーションのコツをつかんでもらう。 ○また、お互いの顔を知り、業務を円滑に進めるためにクライアントとの打合せに同席してもらうこともある。 ○体調管理や受注作業の進捗管理については、自己マネジメント力が求められる。自己マネジメント力を高めるには、バーチャル工房などの中間施設内で、調整された業務に対して納期を守るという経験を通じて獲得することが大切。 ○体調不良を我慢した結果、長期の欠勤につながることのないよう、自分の健康状態を適切に会社に伝えることが重要。  また、在宅就業に関連する知識を付与することを目的に、下記の資料をテキストとして活用している団体もあります。 【参考資料】 「在宅ワークハンドブック」(財団法人社会経済生産性本部、2007) http://www.homeworkers.jp/handbook/index.html 「トラブル予防のためのSOHO 受発注トラブル事例集 web版」(SOHOポータル/財団法人社会経済生産性本部、2005) http://www.soho-portal.org/modules/tinyd9/jireishu/index.html Q3 在宅勤務を進める上で、企業の方に有効な助言は何ですか?  在宅勤務を進める上で、有効と思われる企業の方に対する情報や支援内容について、P54〜55の「障害者の在宅勤務の特徴」で示した「在宅勤務導入のプロセスと特徴」に沿って、図4のとおりまとめてみました。 図4 在宅勤務導入のプロセスと有効な支援 「企業のためのテレワーク導入・運用ガイドブック」(社団法人日本テレワーク協会、2005)の「テレワーク導入のプロセス」を基に当機構が改変 在宅勤務導入のプロセス 1 導入の検討と経営判断 (導入目的の明確化) 2 現状把握 (在宅勤務に関連する制度等を把握する) 3 導入部門の検討 4 導入スケジュールの策定 5 導入部門の選定 6 導入部門に対する説明 7 導入部門に対する教育研修の実施 8 職務内容の決定 9 社内制度作成 ・勤務時間 ・賃金 ・定期出社の取扱い ・福利厚生 ・業務管理の方法 ・通信機器(メンテナンス含む)及び通信費負担の取扱い(助成金の活用) ・社内教育の取扱い ・情報セキュリティの確保  など 10 支援体制の整備 ・在宅勤務コーディネーター配置の検討(助成金の活用) ・コミュニケーション体制の確立 ・健康管理支援 ・相談窓口の設置 11 求人票の提出 ・職務内容 ・勤務時間、賃金等 ・面接 ・採用 12 在宅勤務の導入 13 導入後の問題点の把握 14 問題点への対応、職場定着 有効と思われる支援 ・障害者雇用とCSRについて周知 ・在宅勤務導入のメリットを周知 ・障害者雇用率制度の情報提供 ・障害者雇用納付金制度に基づく助成金の情報提供 ・在宅就業支援団体等の情報提供 ・在宅勤務事例の提供 ・先行導入企業の見学 ・在宅勤務事例の提供 ・在宅就業支援団体等の見学 ・職務創出の相談 ・障害特性の情報提供 ・在宅勤務を進める上の留意事項について情報提供 ・障害特性の情報提供 ・職務創出の相談 ・就業規則、契約書作成の助言 ・先行導入企業の事例紹介 ・就労支援機器の情報提供 ・障害者雇用納付金制度に基づく助成金の情報提供 ・先行導入企業の事例紹介 ・障害者雇用納付金制度に基づく助成金の情報提供 ・ハローワークによる職業紹介 ・ハローワークと連携し、求職者の推薦 ・本人の了解のもと、本人の長所、配慮事項等情報提供 ・生活相談、精神面のフォローアップについて協力(労務管理については、会社が行う) ・教育研修に関する情報提供 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 在宅勤務導入のプロセスに応じて支援団体が留意しているポイントをご紹介します(表4)。 表4 在宅勤務導入のプロセスに応じた就職支援のポイント 在宅勤務導入のプロセス 支援団体からあげられた就職支援のポイント 有効と思われる支援 2 現状把握 ・事業主に障害者についての理解を得るためにアピール方法の工夫が必要(企業の人が集まる会議等で説明、訓練している現場を見てもらう等) ・人事担当者の方と「障害者雇用率」及び「障害者の就労意欲」等について意見交換を行い就職のタイミングを検討する。 ・在宅就業支援団体等の情報提供 ・在宅勤務事例の提供 3 導入部門の検討 ・障害者の適性を評価し、それを元に企業へアピールする。 ・障害者の特性をもとに、職務創出の助言をする。 ・事業主に対して、作業内容や量、質について調整のアドバイスをする。 ・部署又は会社全体で在宅勤務に対する正しい認識をもってもらう。 ・グループ会社に協力を仰ぐなどして、恒常的にパソコン作業の依頼がくる仕組みを構築できるようアドバイスする。 ・在宅勤務事例の提供 ・職務創出の相談 7 導入部門に対する教育研修の実施 ・障害者の特性や配慮事項を理解していただく。 ・障害特性の情報提供 9 社内制度作成 ・在宅勤務の社内規約の整備(身体的に重度の方も多く、勤務時間の配慮、業務管理上の来社の頻度等)に対する助言。 ・自宅が仕事場のため、作業環境の整備について助言。 ・就業規則、契約書作成の助言 10 支援体制の整備 ・業務の内容と伝達システムを明確にしていただくよう助言。 ・先行導入企業の事例紹介 11 求人票の提出 ・能力や技術のある障害者ばかりを雇用するのではなく、教育・訓練の視点も重要(自社で教育・訓練ができなければ支援団体と連携する方法もある)。 ・事業所のニーズ、パソコン技能がどの程度必要とするのかを確認することが必要。求められる技能を明らかにすることで、より実践的な講習を組み立てることができる。 ・ハローワークと連携し、求職者の推薦 13 導入後の問題点の把握 ・企業担当者、本人、支援機関と一同に会する機会を設け、困っていることがないか相談をしている。 ・支援対象者のメンタルサポート(孤独感を感じる場合がある)が重要。 ・生活相談、精神面のフォローアップ(労務管理については、会社が行う)  P58の図4「在宅勤務導入のプロセスと有効な支援」では支援内容が多岐にわたり、支援団体単独では困難な場合があります。ハローワークや都道府県高齢・障害者雇用支援協会等と役割分担をしながら在宅勤務導入にむけた支援を行うと良いでしょう。 Q4 障害のある方の相談やフォローアップでは、どのようなことに気をつけたら良いですか?  支援団体においてサポートを行う際には、障害のある方の希望、適性などを相談や訓練場面を通じて把握し、サポート内容を決定しています。また、在宅勤務や在宅就業につながった場合も、継続的なフォローを行っていることが多くみられます。各支援団体が、相談場面で留意している点について以下の報告が挙げられています。 支援団体の声 相談時に留意している点 ○本人が働く事業所の職種、条件について納得した方が雇用継続率は高くなると思う。支援団体がマッチングをサポートするためには、本人の状況を把握するための十分な時間、能力の把握やスキルアップのための訓練が必要と考える。 ○障害者は行動に制約があることが多いことを念頭に入れ、家族などの支援が可能か等、個々のケースについて十分把握する必要がある。 ○本人の個々の障害を踏まえ、できる事、できない事、適性のある仕事を見極め、仕事の指示をする事が重要。 ○精神障害のある方の場合、どのようなことがストレスになるのかを注意してモニタリングする必要がある。本人が行き詰っている原因であるストレッサーがなにかを把握するのが先決。 フォローアップ時に留意している点 ○雇用後3ヶ月以内に課題が生じることが多く、その時点ですぐに対処することが重要。 ○在宅勤務者同士のコミュニケーションや支援者との面談が必要。 ○在宅勤務者は孤立しがちなのでモチベーション維持のためにも定期的な在宅勤務者同士の集まり、研修が必要。 ○支援対象者のメンタルサポート(孤独感を感じる場合がある)が重要。  また、障害者の在宅勤務や在宅就業の特徴として、 ・ 障害にあわせた作業環境の整備 ・打合せのための通勤など介助が必要な場合がある ・ 疲労による体調悪化、長時間同じ姿勢をとることで発生しやすい褥創(じょくそう)に気を配る必要性 などが指摘されています(日本障害者雇用促進協会、2002)。 Q5 在宅勤務や在宅就業をサポートするために、どのような社会資源がありますか?  在宅勤務や在宅就業を進める上で、企業や障害のある方に対する支援内容は多岐に渡ります。全ての支援を単独の支援団体が担うことは極めて困難です。そこで、在宅勤務や在宅就業をサポートする上で有効と思われる社会資源や制度について、ケーススタディの報告を参考に、「表5 在宅勤務・在宅就業をサポートする上で活用できる社会資源」のとおりまとめてみました。 表5 在宅勤務・在宅就業をサポートする上で活用できる社会資源 支援制度 名  称 内  容 在宅就業障害者特例調整金  障害者雇用納付金申告もしくは障害者雇用調整金申請事業主が、在宅就業障害者や在宅就業支援団体に対して仕事を発注し、業務の対価を支払った場合に支給します。「調整額(63,000円)」に「事業主が当該年度に支払った在宅就業障害者への支払い総額を評価額(105万円)で除して得た数」を乗じて得た額が支給されます。  なお、法定雇用率未達成企業については、在宅就業障害者特例調整金の額に応じて、障害者雇用納付金が減額されます。 ●問い合わせ⇒都道府県高齢・障害者雇用支援協会 在宅就業障害者特例報奨金  報奨金申請事業主が、在宅就業障害者や在宅就業支援団体に対して仕事を発注し、業務の対価を支払った場合に支給します。「報奨額(51,000円)」に「事業主が当該年度に支払った在宅就業障害者への支払い総額を評価額(105万円)で除して得た数」を乗じて得た額が支給されます。 ●問い合わせ⇒都道府県高齢・障害者雇用支援協会 障害の態様に応じた多様な委託訓練  障害者が居住する地域において、就職に必要な知識・技能を習得するための公共職業訓練を機動的に実施しています。委託訓練の期間は原則3か月以内です。 〈知識・技能習得訓練コース〉  社会福祉法人、NPO法人、民間教育訓練機関等において、主として座学により就職の促進に資する知識、技能を習得するためのコース 〈実践能力習得訓練コース〉  企業等の事業所現場を活用して、就職のための実践能力を習得するためのコース 〈e−ラーニングコース〉  通所が困難な障害者に対して、Web上での課題提出・添削指導、e−メール、掲示板、受講者間のチャット等、インターネットの機能を十分活用して、在宅勤務、在宅就労が可能な水準のIT技能の習得を図るコース ●問い合わせ⇒都道府県の職業能力開発校、ハローワーク −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 障害者試行雇用(トライアル雇用)事 業  障害者に関する知識や雇用経験がないことから、障害者雇用をためらっている事業所に、本格的な障害者雇用に取り組むきっかけづくりを進める事業です。事業主と有期雇用契約を締結し、3か月間の試行雇用を行います。雇用に対する不安を軽減し、事業主と障害のある方の相互の理解を深めます。事業主には障害のある方1人につき、1か月4万円の奨励金が支給されます。 ●問い合わせ⇒ハローワーク 助 成 金 名  称 内  容 特定求職者雇用開発助成金  身体障害者、知的障害者又は精神障害者等の就職が特に困難な方をハローワーク等の紹介により雇い入れた事業主に対して、その賃金の一部を雇い入れた日から一定期間助成するものです。 ●問い合わせ⇒都道府県労働局、ハローワーク 障害者雇用納付金制度に基づく助成金  事業主が障害者を新たに雇い入れたり、重度障害者の安定した雇用を維持するために、少なからぬ経済的負担がかかることがあります。障害者雇用納付金制度に基づく助成金は、その費用の一部を助成し、負担の軽減を図ることで障害者の雇い入れや継続雇用を容易にしようとする制度です。  障害者である在宅勤務者が対象となる助成金には、次のものがあります。 1 障害者作業施設設置等助成金  障害者を常用労働者として雇い入れるか継続して雇用している事業主が、その障害者が障害を克服し作業を容易に行うことができるよう配慮された作業施設または改造等がなされた作業設備の整備等を行う費用に対する助成金です。 2 障害者福祉施設設置等助成金  障害者を常用労働者として雇い入れるか継続して雇用している事業主またはその事業主が加入している事業主団体が、障害者である労働者の福祉の増進を図るため、障害者が利用できるよう配慮された福利厚生施設の整備等を行う費用に対する助成金です。 3 障害者介助等助成金  重度身体障害者、知的障害者、精神障害者または就職が特に困難と認められる身体障害者を常用労働者として雇い入れるか継続して雇用している事業主が、障害の種類や程度に応じた適切な雇用管理のために必要な介助等の措置を実施する費用に対する助成金です。 ・重度中途障害者等職場適応助成金 ○ 中途障害者の職場復帰を促進するための職場適応措置の実施 ・職場介助者の配置または委嘱助成金 ○ 事務的業務に従事する視覚障害者、四肢機能障害者の業務遂行のために必要な職場介助者の配置または委嘱 ○ 事務的業務以外に従事する視覚障害者の業務遂行のために必要な職場介助者の委嘱 次ページに続く −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 障害者雇用納付金制度に基づく助成金 ・職場介助者の配置または委嘱の継続措置に係る助成金 ○ 事務的業務に従事する視覚障害者、四肢機能障害者の業務遂行のために必要な職場介助者の配置または委嘱 ○ 事務的業務以外に従事する視覚障害者の業務遂行のために必要な職場介助者の委嘱 ・職業コンサルタントの配置または委嘱助成金 ○ 障害者の雇用管理のために必要な職業コンサルタントの配置または委嘱 ・在宅勤務コーディネーターの配置または委嘱助成金 ○ 在宅勤務障害者の雇用管理および業務管理の業務を担当する在宅勤務コーディネーターの配置または委嘱 ●問い合わせ ⇒ 都道府県高齢・障害者雇用支援協会 支援機関 名  称 内  容 ハローワーク  事業主に対して雇用率達成指導を行う中で、職業紹介部門、事業主指導部門が連携し、雇用率未達成企業からの求人開拓、未達成企業への職業紹介を行っています。  本ケーススタディにおいても、ハローワークからの情報提供により在宅勤務につながった事例があります。 在宅就業支援団体  在宅就業障害者に対する支援を行う団体として厚生労働大臣に申請し、登録を受けた法人です。在宅で働く障害のある方に対し、事業主から発注を受けた業務の提供、相談・確認等の業務遂行援助、業務の対価の支払いを行います。  また、在宅就業に向けた職業講習、就職援助等を行います。 (在宅就業支援団体の一覧はP79〜P81を参照) 社団法人 日本テレワーク協会  テレワークに関する調査研究、普及啓発を行っています。ガイドブックの発行やテレワーク導入に向けた相談などを実施しています。 障害者職業能力開発校  訓練科目・訓練方法等に特別の配慮を加えつつ、障害の態様等に応じた公共職業訓練を実施しています。また、企業に雇用されている障害者に対して、多様な職務内容の変化にも迅速に対応できるよう、在職者訓練を実施しています。  障害者職業能力開発校は全国19か所(国立13校、都道府県立6校)に設置されており、国立の13校のうち2校は独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構に、11校は都道府県に運営が委託されています。 障害者 ITサポートセンター  障害のある人の情報通信技術の利用・活用の機会の拡大を図るため、IT関連施策の総合サービス拠点となる障害者ITサポートセンターが設置されています(25都府県・市35か所:平成19年4月1日現在)。障害者からのIT関連相談やパソコンボランティアの派遣等を行っています。 ・ 在宅勤務、在宅就業と多様な働き方  本書及び「障害者の在宅雇用事例集-就職支援ノウハウを活用して-」((独)高齢・障害者雇用支援機構、2008)で収集したケーススタディを基に、在宅勤務、在宅就業それぞれの状況を「表6 ケーススタディからみた在宅勤務・在宅就業対比表」のとおりまとめました。 表6 ケーススタディからみた在宅勤務・在宅就業対比表 在宅勤務(14事例) 在宅就業(9事例) 就業場所 ・自宅(11事例) ・自宅を中心とするが定期的(週1〜2回)な出勤(3事例) ・自宅(7事例) ・支援団体に通所して就業(2事例) 身分 ・契約社員(10事例) ・正社員(4事例) ・請負(企業に雇用されていない) 就業時間 ・1日4時間〜8時間勤務(14事例)  (8時間勤務が2事例、6時間勤務以上が11事例) ・週5日勤務が中心(週20時間以上) ・1日3時間〜6時間(8事例)  (うち1日3〜4時間が6事例) ・週2〜5日 ・また、受注があった時だけ働くケースもある 特   徴 ?週30時間近く働いている人が多い。 ・週20時間以上働いており、障害者雇用率の算定対象となっている。 ・就業場所が自宅のため、通勤の負担がない。 ・会社の同僚、上司の目が届かないため無理をしていないか体調管理に配慮する必要がある。 ・就業時間の長さが負担となることもある。 ?就業時間は個々に応じて様々。 ・請負作業が発生した都度行う人から個人事業主として活動している人もいる。 ・障害や体調に応じて就業時間を調整しやすい。  本書に寄せられたケーススタディでは、 「支援団体に相談をした後、訓練を受講し、在宅勤務につながった事例」 「在宅就業で実績を積んだ後に、在宅勤務につながった事例」 「会社において勤務したものの、体力が続かず退職し在宅就業に切り替えた事例」 など、多様な働き方が示されました。  この多様な働き方というのは、個々の状況に応じた働き方を選択するということであるとともに、状況が変わればその選択も変わりうるということだといえます。P66の図5では、そのような多様な働き方をサイクルとしてとらえてみました。体調、技術の習得状況などに合わせ、様々な選択肢があることを伝え、サポートすることが望まれます。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 図5 多様な働き方のサイクル 移動頻度 多い 少ない又は自宅 会社において勤務 在宅勤務 在宅就業 雇 用 非雇用 例・ 在宅勤務に必要なスキルが確認され、在宅勤務に移行 例・ 体調が整い会社において勤務 例・ 退社して独立 例・ スキル、実績が認められ在宅勤務で雇用 例・ 退社して独立 例・ スキル、実績が認められ雇用 多様な働き方に向けたサポート ■企業に対して  障害のある人の雇用を検討している企業に対しては、在宅勤務も雇用の一形態であることを周知していくことが望まれます。その際には、各種助成金(特定求職者雇用開発助成金、障害者作業施設設置等助成金、在宅勤務コーディネーターの配置又は委嘱助成金等)の情報提供も参考となります。  また、どのような仕事であれば在宅勤務が可能かということについて助言をしていくことも重要です。在宅勤務に結びついた事例の中には、障害のある方の能力に応じた職務を企業の方と協議しながら創出していった事例もみられます。  在宅就業に関しては、在宅就業障害者特例調整金、在宅就業障害者特例報奨金の活用も考えられます。 ■障害のある方に対して  在宅勤務、在宅就業に従事するうえで必要なスキルの習得、自己管理が重要といえます。支援団体が障害のある方に対してきめ細やかな訓練、フォローアップを通じて在宅勤務、在宅就業につなげています。支援団体が企業の求めている人材や訓練ニーズを吸い上げサポートした成果といえます。   今後は、本書に寄せられた様々な就職支援のノウハウが支援団体において活用されることを期待します。