非雇用20 Case study 在宅就業経験のあるボランティアを活用し 商品の品質管理と支援対象者へのサポートを強化 Profile 支援団体 特定非営利活動法人 在宅就労支援事業団 ●所在地:熊本県熊本市九品寺5-9-1  ●・096(375)7900 FAX096(375)7702 【事業内容】  平成11年から在宅就業に関する支援や場の提供を行うほか、障害者、生活保護受給者、育児や介護により外出が困難な方などへの相談事業をボランティアスタッフの協力を得ながら行っている。  平成15年4月に特定非営利活動法人として認定、平成18年7月に在宅就業支援団体として登録される。平成20年10月からは就労移行支援事業をスタートさせた。 支援対象者 Eさん ●在住地:熊本県 ●障害種別:精神障害(2級) ●障害状況:2週間に1回、定期通院をしている。 【これまでの経緯】  大学卒業後、事務等の職歴をもつ。平成17年に病気により退職。  在宅就労支援事業団が配布した在宅就業に関する無料相談会の案内を見て来所。対人接触に不安を感じたのと、サポートを受けながら就業をしたいという希望から、平成20年4月から同支援団体を利用する。 支援対象者 柳井 恭代さん ●在住地:熊本県 ●障害種別:身体障害(5級) ●障害状況:変形性股関節症による左股関節機能障害。歩行時に足の長さを調整するための靴と杖を使用している。1ヶ月に1回、定期通院をしている。 【これまでの経緯】  大学卒業後、商品管理、レジ、事務などの職歴をもつ。高校生ぐらいの時に股関節に障害をもち、腰に負担がかかっていた。平成18年に腰の手術を行い、立ち作業が負担となったため在宅就業を希望。平成20年6月に在宅就労支援事業団が開催する在宅就業相談会の案内を見て来所し、それ以降同支援団体を利用している。 支援対象者 山内 優子さん ●在住地:熊本県 ●障害種別:身体障害(5級) ●障害状況:変形性股関節症による左股関節機能障害。歩行時に杖を使用している。1年に1回、定期通院をしている。 【これまでの経緯】  高校卒業後、美容師、保険外交員などの職歴をもつ。平成12年に股関節の手術を行い、立ち作業が負担になっており、また、親の介護が必要であったことから退職した。  在宅就労支援事業団が配布した在宅就業に関する無料相談会の案内を見て来所。足に負担をかけずに就業することを目指して、平成19年9月から同支援団体を利用する。 主な訓練内容 期間 ・Eさん平成20年4月〜 ・柳井さん平成20年6月〜 ・山内さん平成19年9月〜 訓練内容 ・在宅で作業する際の注意点等の講習 ・作業に取組む姿勢、品質・納期に関する自己管理の講習 ・請負で行う物品製造の手順や報告、連絡等の講習 受講方法 ・支援団体に通所して実施 ・10時00分〜15時00分(月〜金) ※作業内容等により受講日は異なる。Eさんの場合は当初の訓練は自宅で行った。 テキスト 教材 在宅就業に関する訓練では支援団体が作成したテキストや企業の仕様書を使用する場合がある。 受講料 なし Eさん、柳井さん、山内さんの在宅就業の内容 請負業務の内容 ・Eさん ケーキ袋加工、宛名シール貼り、歯磨きセット作成、ノベルティー作成 ・柳井さん ケーキ袋加工 ・山内さん サンプル封入、紙類加工、ノベル ティー作成、折込作業 作業時間 ・週5日(4時間/日) ※納期や仕事内容により変動 作業場所 自宅 ※仕事内容によっては支援団体で行う場合もある。 障害への配慮事項 Eさんが支援団体で作業する場合は、他者の視線を感じて緊張することを防ぐため、対面ではなく背中合わせに机を配置したり、パーテーションを入れるなどの工夫を行った。また、柳井さん、山内さんの歩行の邪魔にならないように室内の導線を整理している。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 支援内容 仕事に対する意識づけの徹底した指導と 体調・メンタル面への細やかなサポートで 安定した在宅就業を実現 在宅就労支援事業団 理事長 田中 良明さん support 支援団体 Eさん、柳井さん、山内さんの訓練への支援 在宅就業の心構えについて本人・家族の理解をうながす  在宅就業について「できる時に仕事をやればいい」と納期を緩く考える就業者もいるため、まず最初に「仕事への意識づけ」の講習を徹底して行った。また、在宅就業は家族のサポートなくしては成り立たないとの考えから、家庭を訪問し、家族と懇談することで、仕事への理解をうながした。この家庭訪問は在宅就業中も行い、仕事状況の報告を随時行っている。 障害特性に応じて訓練方法を柔軟に選択  訓練は個々の在宅就業業務に関する指導が主で、発注の流れの説明と企業の要望の伝達、クレームや進捗状況の報告の方法や作業手順の確認などを行う。在宅就業者同士の交流と仕事へのモチベーションを高めるため、基本的に訓練は通所で行うことにしているが、Eさんの場合、当初大人数での講習が難しかったため、自宅に指導員がおもむき、講習を行った。 パソコン訓練のテキスト 現在はEさんの対人不安も緩和されており、パソコン訓練では、他の人と机を並べて取り組むことが可能になっている ハードルを与え、スキルアップをバックアップ  物品製造訓練では、今まで行っていた商品より、より難易度の高い組み立ての複雑なものを与えることで、スキルアップを図っている。その際、より高いスキルをもつ仲間と席を同じくすることで、刺激を与える工夫をしている。 Eさん、柳井さん、山内さんの在宅就業への支援 体調やメンタル面をフォローするサポート体制を整備  在宅就業では、体調管理を第一と考えているため、仕事が思うように進まない時でも、あせらせないように指導している。障害者職業生活相談員の資格をもつ職員が定期的に電話をかけ、体調を確認するほか、10日に1度はカウンセリングを行っているが、声に元気がない・仕上がった商品にミスが頻発しているなどの異変を感じたら、すぐに指導員が自宅へ向かい、フォローしている。 品質管理のチェック表をカウンセリングにも活用  物品製造の仕事では、商品の品質管理のためにチェック表を活用しているが、製作した商品の質が落ちた場合は、作業手順を確認する講習会に参加してもらうか、直接自宅を訪問することで指導を強化している。また、チェック表には「講習会参加」の項目があり、過去に講習会に参加したかどうか等のデータを蓄積し、今後の指導やカウンセリングの参考にしている。 ▲一人ひとりのチェック表はファイルで保管している comment  在宅就業を始めた当初は、周囲に人がいると緊張してしまって大変でしたが、在宅就労支援事業団のスタッフの方が休憩をこまめに入れるなどの配慮をしてくれたので、助かりました。現在は以前ほど緊張はしませんし、仕事が面白いと感じています。今後は、なるべく休まず仕事ができるようになれればと思っています。(Eさん)  在宅で行う物品製造の仕事は受注品の数が多いので大変ですが、最近はそれがないと寂しいと感じるようになりました。現在はパソコンを使った仕事もできるように、講習を受けているところです。難しいけど楽しいですよ。これからも自分ができることは何でもチャレンジしていきたいと思っています。 (山内優子さん) 支援ノウハウQ&A Q 在宅就業で製作した数多くの受注品をどのような体制で評価していますか? A 受注品の品質のチェックはすべて手作業で行います。当事業団には職員12名の他に、当事業団の主旨に賛同してくれた有償ボランティアが30名、サブボランティアが30名おり、商品のチェックはこれらのボランティアに協力をお願いし、瞬時に評価が行える体制を整えています。ボランティアは、かつて当事業団の利用者であった人が多く、在宅就業に対する理解も深いため、指導員として県内各地にいる支援対象者のサポートもしています。 作業場の様子。 ここで万単位の受注品を1〜2日でチェックすることも珍しくないという