非雇用19 Case study 障害特性に応じた配慮で得意作業を伸ばし、 スキルアップを実現 Profile 支援団体 特定非営利活動法人 アイ・ネットワークくまもと ●所在地:熊本市水前寺6丁目50-25 ●・096(321)7020 FAX096(321)7021 ●URL:http://www.npo-ink.jp/ 【事業内容】  平成14年に設立し、障害者へのパソコンサポートや支援ソフト等の普及支援、技能習得のための教育訓練の活動をしている。パソコン操作に関する質問を受け付ける「パソコン救急隊」、パソコン技能を指導する「パソコンせんせい」、在宅就業を支援する「いきいきテレワーク」事業などを実施。また、障害者の委託訓練や熊本県障がい者ITサポートセンターの運営もしている。 支援対象者 Iさん ●在住地:熊本県 ●障害種別:精神障害(2級) ●障害状況:広汎性発達障害(アスペルガー症候群) 【これまでの経緯】  大学卒業後、アルバイトの経験はあるが長期の職歴はない。熊本障害者職業センターで支援を受けた後、支援団体を紹介される。ビジネスルールや仕事の段取りを学びたいとのことから、平成17年4月から利用を開始。 主な訓練内容 期間 平成17年4月〜19年4月 1日4時間(午前2時間、午後2時間)週5日 訓練内容 ・ビジネスマナー  (挨拶の仕方、仕事の指示の受け方) ・テープ起こし(会議等の議事録作成) ・会員に配布するちらしの入力とイラスト 等の配置 ・会議室の机のセッティング 受講方法 支援団体に通所して実施 受講料 なし Iさんの在宅就業の内容 請負業務の内容 ・支援団体が使用する定型文書の作成 ・点字名刺の作成、発送、請求業務 ・支援団体利用者への請求書作成、  送付作業 作業時間 1日6時間(10時〜17時、休憩1時間)、週5日 作業場所 支援団体 障害への配慮事項 ・叱責等の言葉によりパニックを起こすこ とがあるので、言葉かけに工夫をした。 ・仕事の仕上がりチェックは他のスタッフ が行った。 用語解説 「アスペルガー症候群」  他の人との社会的関係をもつこと、コミュニケーションをすること、想像力と創造性の分野に障害を持つとされる。例えば、「会話はスムーズであるが、辞書のような硬い言回しや、慣用句などのフレーズを使う」、「表面的な言葉の意味はわかるが、裏の背景や意義を理解できない」等が指摘されている。言葉の発達に著しい遅れがみられないために、一見して障害があるようには見えないことがある。  就職上の課題として、上司の指示に従って速やかに仕事を進めることや失敗時に理由をうまく説明すること、同時に複数の仕事をこなすことが苦手な場合がある。  作業指示を「わかりやすく」「単純に」すること、作業や予定の変更を少なくすること、キーパーソンを配置する等の配慮により職場で能力を発揮している事例がある。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 支援内容 本人の得意、不得意を見極め、 長所を伸ばすアプローチ 特定非営利活動法人 アイ・ネットワークくまもと 事務局長 村上 栄基さん support 支援団体 支援対象者 Iさんの訓練への支援 仕事の指示、優先順位を明確にする トレーニングを実施  本人、家族の希望から会社の中で必要とされるビジネスマナーの習得、定型的な仕事を単独で遂行できること、パソコンスキルを身につけることを目標に支援した。  まず、作業の指示を受け、分からないときはその場で質問するように促した。その際に、仕事内容を明確にし、期限を定め、仕事のやり方について具体的な指示をするよう配慮した。Iさんには仕事の内容や手順をメモにとる習慣を意識づけし、ふせんに仕事内容を書いてパソコンディスプレイに貼る工夫も助言した。  また、1つの仕事が終了したら、作業日報で報告してもらい、誤字・脱字等ケアレスミスがないかチェックしてもらい、正確性を高める取組を行った。 空いている時間を有効活用して、 資格取得にチャレンジ  在宅就業業務がない時には、パソコン技能習得や資格習得の自己学習に取り組んでもらった。その結果、簿記3級、初級システムアドミニストレータ、エクセル表計算処理技能認定試験1級の合格を果たした。 Iさんの在宅就業への支援 本人の得意な作業に特化して、 作業全体の効率をアップ  入力業務では、障害特性もありミスを完全に無くすことは難しかった。しかし、作業スピードが速かったことから、入力は本人に任せ、最終的なチェックは他のスタッフが行うというスタイルで進めた。これにより、これまでIさんが単独でチェックをし、ミスの有無を確認していた頃より、入力等に専念できる環境ができたため、作業全体の効率は良くなった。在宅就業の経験を経て、平成19年に支援団体のスタッフとして勤務することになる。 求職活動をサポート  平成20年3月の事務所移転に伴い、支援団体を退職することになった。その後、Iさんは離職者を対象としたCADの訓練を受講。現在はご両親の仕事の一部を手伝いながら、求職活動中である。ご本人から求職活動に関して相談を受けた際には、職種の選び方等助言をしている。 ▲アイ・ネットワークくまもとが入居しているビル comment  アイ・ネットワークくまもとを利用して、いろんなことを教えてもらって良かったです。CAD等のパソコン技能を身につけて、早く仕事に就きたいと考えています。(Iさん) 支援ノウハウQ&A Q 発達障害者に対する支援はどのようにして行いましたか? A 本人の得意、不得意を見極めて、長所の部分を伸ばせるように工夫しました。過度な叱責がストレスとなる場合があるので、本事例のようにケアレスミスが無くならない時には、最終的なチェックを他のスタッフが行う体制にし、入力に専念できる環境をつくりました。