非雇用16 Case study 民間企業と社会福祉法人の得意分野を活かし、 データエントリー業務で在宅就業を実現 Profile 支援団体 ワークスネット株式会社 ●所在地:(千葉事業所) 千葉市美浜区中瀬 2丁目6番地 WBGマリブイースト16階 ●・043(297)3391 FAX043(297)3371 ●URL:http://www.e-worksnet.co.jp/ 【事業内容】  平成18年1月にITソリューションシステム開発会社、カーネルシステムズ⑭と(社福)あかねの共同により会社設立。同年5月に在宅就業支援団体として登録。保険・カード会社等の申込書入力等、データ入力受託事業を行う。障害者在宅入力事業コンサルテーションと在宅就業希望者への業務提供等を行っている。 支援対象者 伊藤 和也さん ●在住地:千葉県 ●障害種別:身体障害(1級) ●障害状況:交通事故時の脊髄損傷による両上下肢機能障害。車椅子を使用。 【これまでの経緯】  平成6年に交通事故により受障。パソコンに興味を持ち、平成14年から千葉県障害者高等技術専門校にて1年間職業訓練(エクセル・ワード)を受講する。在宅就業を希望していたところ、高等技術専門校からワークスネット⑭を紹介される。同企業を運営する(社福)あかねにおいて、3ヶ月間データ入力等の訓練を受け、平成18年4月から在宅就業を開始している。 支援対象者 Aさん ●在住地:千葉県 ●障害種別:身体障害(1級) ●障害状況:ミトコンドリア脳筋症による体幹機能障害。車椅子を使用。外出には介助が必要。3ヶ月に1回定期通院をしている。 【これまでの経緯】  中学校在学時に発症、闘病生活を送る。e-ラーニングでマイクロソフトオフィス2003スペシャリスト資格を取得。インターネットで在宅就業に関する情報を収集し、ワークスネット⑭ を知り相談。同企業を運営する(社福)あかねにおいて、5ヶ月間データ入力等の訓練を受け、平成19年3月から在宅就業を開始している。 主な訓練内容 期間 伊藤さん 平成18年2月〜18年4月(3ヶ月間) Aさん  平成18年11月〜19年3月(5ヶ月間) 訓練内容 共同経営者である(社福)あかねに訓練を依頼し、実施。 ・マイクロソフトエクセル、アクセスでデータ入力練習 ・ワークスネットが使用している業務ソフト(エントリーBB)を使用した入力練習 受講方法 ・自宅で課題を学習。 ・ウェブ上の掲示板やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、メール、スカイプ等を活用して体調や困っていることがないか把握に努めている。 ・専用ソフトのインストール、トラブルへの対応はリモートアクセスで受講者のパソコンに入り対処している。 テキスト 教材 ・手書きのダミーデータを使用し、入力練習。 ・入力練習用の指示書(入力方法、分からないときの処理など)を使用。 ・(独)高齢・障害者雇用支援機構が開発した知的障害者用トレーニングソフト「やってみよう!パソコンデータ入力」を活用することもある。 受講料 無料 伊藤さん、Aさんの在宅就業の内容 請負業務の内容 保険・カード会社等の申込書データの入力 作業時間 伊藤さん  ・週5日(月〜金) ・8時00分〜12時00分  (4時間/日) Aさん ・4時間/日 作業場所 自宅 障害への配慮事項 Aさん ・1日の作業時間を短くし、休憩を挟んだ作業スケジュールを設定。 ・上肢の動きに制限があるため、テンキーパッドを使用した作業環境の設定と英数字項目のみとする作業内容の設定。 用語解説 「インターネット利用分割分散データエントリー」   原票(カード申込書等)をスキャニングしてイメージデータに変換し、インターネット回線を用いて配信をする。イメージデータに変換する際には、名前、住所等分割し、個人を特定できないようにする。分割されたデータは在宅就業者によってそれぞれ入力される。入力されたデータを回収し、ひとまとまりの個人データとして結合する。  原票を移動させず、しかも個人が特定されずに入力ができるので情報漏えいを防止することができる。 イメージ分割 ■原票(紙)をスキャニングしてイメージデータ(画像データ)に変換し、インターネット回線を使いデータを配信するため入力原票は移動しません。 ■イメージデータは、情報漏洩防止のため、名前、住所、電話番号など細かく分割し、個人を特定できないイメージデータにします。 在宅エントリー ■分割したイメージデータを各パソコンに1枚ずつ配信、専用ソフトでデータ入力を行います。 データ結合 ■入力されたデータは回収され、ひとまとまりの個人データとして結合されます。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 支援内容 徹底したデータ入力訓練と より単価の高い作業へのスキルアップ支援 ワークスネット株式会社 障害支援部長 安西 信男さん support 支援団体 支援対象者 伊藤さん、Aさんの訓練への支援 個人情報を扱う業務に備え、訓練前に自宅の環境を整備  ワークスネット⑭では「インターネット利用分割分散データエントリー」により、クレジットカードの申込書の入力等を行っている。個人情報のデータを扱うということから、訓練を始める前に自宅を訪問し、環境整備をしている。具体的には、インターネットの回線状況、データが本人以外の目に触れず、作業に集中できる環境を準備している。また、障害特性上、入力しやすいポインティングデバイスや、ショートカットキーの活用方法を併せて助言している。 3段階の入力訓練を経て、在宅就業につなげる  入力訓練については、共同経営している(社福)あかねが支援している。データ入力に必要な正確性やスピードの養成のために、エクセル、アクセスを活用して3段階(・数字・数字・アルファベット・氏名(旧字の区別)・住所)の入力練習を実施している。併せて、手書きの癖を正しく読み取る、読み方が分からない氏名の検索方法などを訓練している。これら3段階を通じて4,000件のデータ入力を行っている。それぞれの段階でスキルチェックテストを行い、ミスが2件以上発生すると同じパターンを再度練習するようにし、徹底して正確性を高める取組をしている。  3段階のスキルチェックテストを合格して、実際のデータエントリー作業に進むこととなった。 ▲入力練習の画面 伊藤さん、Aさんの在宅就業への支援 より単価の高いデータエントリーに向けたスキルアップ  データエントリーは、企業から受注が入ると1件ずつネット配信され、在宅就業者がクリックする度にエントリーが行える仕組みになっている。作業上の質問やトラブルについてはメールで対応している。  より単価の高い作業に取組むためのサポートとして、書類によって入力処理を変更する(特定の記号がでたときに処理を変える)、入力ミスを直す等の対応を訓練し、スキルアップを支援している。 支援と作業ログを確認し、無理をしていないか体調管理をサポート  在宅就業では、体調の自己管理が重要であるが、ワークスネット⑭では、サーバにアクセスしているログを週単位で把握し、夜中の作業が多い場合は、日中に行うよう助言している。  他者(精神障害者)の例では、作業リズムが改善されない場合、予め連絡をとることを了解してもらった上で、主治医に状況を伝え、本人に助言をしてもらうこともある。 comment  就職難の中で仕事をする機会を提供してもらって、ワークスネット⑭には感謝しています。(伊藤さん) ・障害支援部長の安西信男さん(左)と伊藤和也さん(右) 支援ノウハウQ&A Q 社会福祉法人と民間企業が共同経営していることのメリットは? A 福祉サイドのスタッフでは営業力が乏しいのですが、民間企業では営業部門を抱えていることもあり、会社との交渉で力を発揮してもらえました。また、危機管理能力(顧客とのトラブルに対するノウハウ)も豊富なため、福祉サイドのスタッフだけでは得られないメリットを得ることができました。  また、民間企業サイドからしてみれば、福祉や障害に関する知識が不足しているので相互に補完しあえることが良かったと思います。