雇 用13 Case study 障害者在宅就業ネットワーク「マニファクチャBU」を活用し、 スムーズな仕事のながれを確立 Profile 支援団体 特定非営利活動法人 ぶうしすてむ ●所在地:愛媛県松山市御幸2-1-16 ●・089(923)5002 _FAX089(927)1557 ●URL:http://www.busystem.jp/ 【事業内容】  平成9年設立。パソコンの面白さや操作法を伝えるパソコンボランティアの養成と派遣事業を行っている。平成16年から就業支援としてIT講習を開始。平成17年からメンバー有志により、障害者在宅就業ネットワーク「Manufacture BU」を立ち上げる。このネットワークを活用し、講習会の開催や在宅就業の受注から謝金の支払いまでの一貫したシステムを構築し、障害者の就業を支援している。 支援対象者 Aさん ●在住地:愛媛県 ●障害種別:身体障害(2級) ●障害状況:両上下肢障害により車椅子を使用。介護等の必要はなし。自動車免許取得。 【これまでの経緯】  特別支援学校高等部を卒業後、国立吉備高原職業リハビリテーションセンターデザイン科で1年間職業訓練を受講。その後、えひめ障がい者就業・生活支援センターに補装具の修理を相談をした折、同センターの紹介にて支援団体を知り、受託事業「マルチメディアオーサリング科実務研修」を受講。支援団体の請負業務を行っている。(平成22年度に同支援団体の正社員として採用を予定) 雇用先 特定非営利活動法人 ぶうしすてむ ●プロフィールは「支援団体」に同じ。 ■理事:7名 ■従業員数:7名(理事) ■障害者の在宅勤務者数:1名(予定) 雇用のきっかけ  在宅就業でのビデオソフト編集、印刷物のレイアウトなどの業務を通して、本人の持つパソコンスキル及びクライアントに対するきめ細やかな仕事ぶりが高く評価された。また、IT講習の講師を務め、障害者在宅就業の人脈づくりに大きく貢献しており、正社員として能力を発揮して欲しいと考えたため。 Aさんの雇用状況(予定) 従事業務 ビデオ、DVDの編集作業、印刷物のレイアウト、支援団体が行うIT講習の講師 雇用形態 在宅勤務を中心とした雇用を予定。 勤務時間 業務によって変動あり。 業務の 進捗管理 特定業務については本人の裁量により管理。それ以外は、事務局がメール、電話などで管理。 賃金 月給制(予定) 設置機器 パソコン、プリンタ、ビデオ編集機器 配慮した事項 事業所内にサーバーを設置し、大容量のデータのやりとりが可能な環境を整備。リモートコントロール、スカイプなどの通信環境も整備。 ▲Aさんが動画編集した結婚式のスライドショー ▲Aさんが作成した企業会報。大幅に納期が短縮され、クライアントからも喜ばれている。 用語解説 「Manufacture BU」 マニファクチャ   ぶうしすてむが平成17年に立ち上げた障害者在宅就業システム。受注業務を担当者のスキルや体調などを考慮して割り振り、業務の進捗、納品、謝金までを一括管理している。業務内容は、ビデオ・DVD編集、各種プログラム作成、CAD図面作成など多岐にわたる。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 支援内容 IT講習を開催し、 仕事の魅力と在宅就業のながれを 分かりやすくサポート 特定非営利活動法人 ぶうしすてむ 二神 重則さん support 支援団体 支援対象者 雇用前 本人の希望にマッチした実務研修を提供、 実際の仕事を通してスキルアップを支援  平成17年8月〜11月に行われたマルチメディアオーサリング科実務研修(ビデオソフトの編集)を実施。研修期間中には、福祉医療機構助成による上肢障害者向け入力補助ソフトの講習も併せて行った。また、本人のパソコンスキルの強化を目的に、OA実務研修(ワード・エクセル・インターネットなど)を1ヶ月受講してもらい、並行するかたちでビデオ編集を使った請負業務を在宅就業で1週間提供。実務をこなしながらスキルアップを図ってもらった。  支援団体では、動画編集にともなう写真や音楽などの素材をAさんに提供(サーバーにアップ)し、業務の中間支援を図った。 雇用後 “教わる側”から“教える側へ”。 在宅就業の魅力を広める司令塔に  雇用後も本人のスキルアップ(最新の動画編集ソフトの技術習得)にともなうサポートを継続していく予定。Aさんがこれまでに受講したIT講習の内容をもとに、今後は“教わる側”ではなくIT講師として“教える側”に重点を置いてバックアップしていく。さらに、障害者在宅就業ネットワーク「Manufacture BU」の司令塔として在宅就業のシステムと仕事の魅力を広めてもらいたい。 comment  えひめ障がい者就業・生活支援センターに相談に行ったのが縁で、ぶうしすてむで在宅就業することができました。現在は主に動画編集に携わっていますが、お客様が見る時間がたとえ数秒であっても、いただいた仕事は手を抜かずに全力を尽くすことが私の信念です。IT講師として“教える立場”でもありますので、社会に貢献できる人材を育て、もっとたくさんの在宅就業者の仲間を増やしていきたいと考えています。 ▲Aさん 雇用にあたって(予定) 支援団体としてのきめ細かい支援と雇用主としての 利益確保のバランスを図っていきたい  Aさんが得意とするビデオ編集は日進月歩の世界。採用後はクライアントに納得いただける成果物を提供するためにも、さらなるスキルの向上に努めてほしい。ぶうしすてむでは現在、雇用保険、社会保険、助成金などAさんの生活面を含めたバックアップ体制を整えるべく、ハローワークや社会保険労務士、市役所の地域経済課などにも相談している。  現在、ぶうしすてむでは障害者のペースや障害レベルに合わせ、請負業務を提供し在宅就業を支援している。一方、Aさんを在宅勤務で雇用していくために、雇用主として利益の追求や雇用管理、賃金の取り決めなどを定めていく必要がある。今後は支援団体としてのきめ細かい支援とともに、雇用を維持するための利益確保、雇用管理のバランスを両立していきたいと考えている。 ■図■ きめ細かい支援 利益確保 ぶうしすてむ ▲「きめ細かい支援」と「利益確保」のバランスがカギ comment  Aさんの仕事ぶりは、ひと言でいえば「匠」でしょうか。たとえば、結婚式のスライドショーの動画編集では、お客様も気付かないような赤目を補正してあげたりとか、やさしい心配りをもって業務にあたっています。今後はAさんのような高いスキルを持つ在宅就業者の輪をさらに広げて、企業が安心して仕事を出せる体制を作り上げていきたいと考えています。 ▲特定非営利活動法人  ぶうしすてむ  理事長 川崎 壽洋さん 支援ノウハウQ&A Q 在宅就業において受注を増やすために工夫されていることがあれば教えてください。 A 地味な活動かもしれませんが、連携機関などとの会合にのぞむ際、一人でも多くの人に当法人の名刺を配るようにしています。名刺の裏面に自分たちができる業務内容を列記し、まずは「ぶうしすてむ」のことを知っていただくのが、最初のステップと考えています。・仕事は人間関係が連れてくる・というのが、私たちがこれまでの経験から学んだことです。最近では口コミで私たちの活動が話題となり、行政機関などからもホームページの作成依頼をいただけるようになりました。これらの活動を支えているのが、障害者在宅就業ネットワーク「マニファクチャ BU」です。これは在宅就業者がお互いのスキルを活かしながら仕事に向き合い、謝金の配分を当法人1、中間支援者3、ワーカー6を基本としています。このシステムが在宅就業者に「やる気」を起こさせ、受注に結びついているのだと思います。