雇 用11 Case study IT講習で見せた仕事への情熱を、 雇用先でも活かせるようにバックアップ Profile 支援団体 特定非営利活動法人 ぶうしすてむ ●所在地:愛媛県松山市御幸2-1-16 ●・ 089(923)5002 FAX089(927)1557 ●URL:http://www.busystem.jp/ 【事業内容】  平成9年設立。パソコンの面白さや操作法を伝えるパソコンボランティアの養成と派遣事業を行っている。平成16年から就業支援としてIT講習を開始。平成17年からメンバー有志により、障害者在宅就業ネットワーク「Manufacture BU」を立ち上げる。このネットワークを活用し、講習会の開催や在宅就業の受注から謝金の支払いまでの一貫したシステムを構築し、障害者の就業を支援している。 支援対象者 竹内 涼さん ●在住地:愛媛県 ●障害種別:身体障害(1級) ●障害状況:脊髄損傷による両上下肢機能障害。車椅子を使用、呼吸で動作するマウスを使用。食事等家族による介助を受けている。 【これまでの経緯】  平成16年、厚生労働省によるバーチャル工房支援事業の募集があり、その経緯でぶうしすてむを知った。その後、ぶうしすてむ主催の委託事業「在宅就業を目指す障害者対象のWebデザイン技術者養成」などを通じてwebアクセシビリティー等を学ぶ。平成20年1月にまるく株式会社に在宅勤務で採用される。 雇用先 まるく株式会社 ●所在地:愛媛県松山市吉藤3丁目4-6 ソーシャルビル ●・089-911-1047 ●URL:http://maruc.biz/ ■従業員数:37人 ■障害者の在宅勤務者数:19人 【事業内容】  障害者自立支援法に基づく障害者福祉サービスとして、就労継続支援A型(雇用型)事業を行っており、データ入力の受託、動画データの編集、商品販売サイトの運営受託、雑貨などの卸売(商社)業務、及びイベントの企画・運営業務などを行っている。 雇用のきっかけ  支援団体が年2回開催している在宅就業事業説明会「お仕事情報ステーション」に竹内さんとまるく株式会社が出席。 この出会いがきっかけとなり雇用に至った。また、竹内さん自身も障害の重度化に備えて在宅勤務を検討していた時期だった。 竹内さんの雇用状況 従事業務 自社ホームページの作成、動画データ編集業務 雇用形態 在宅勤務(パート勤務) 週1回の定期出社 ※出社が困難な時は除く 勤務時間 10時00分〜15時00分(4時間勤務、休憩1時間) 業務の進捗管理 企業支援スタッフが、メールによる報告書に基づき定期的な進捗管理を行う。また。Webカメラや掲示板を活用して随時進捗管理を行っている。 賃金 時給制 設置機器 暗号化USB ※設置機器の購入、設置費用は企業負担、消耗品の購入は必要に応じて企業が支給 活用した制度 特になし 配慮した事項 日々の体調管理、中でもメンタル面のサポートに配慮。就業面では、会社の書類をPDF化し情報不足にならないようにし、メール以外にもWebカメラ、掲示板などを活用することで情報が共有しやすい環境を整備し、社員としての一体感を高めている。なお、オーバーワークにならないよう勤務時間の意識付けを図っている。 ▲竹内さんがデザインしたホームページ ▲平成20年2月2日に開催された在宅就業事業説明会「お仕事情報ステーション」 用語解説 「Webアクセシビリティ」  アクセシビリティ(Accessibility)とは、アクセス(Access)+可能であること(ability)を意味する。高齢者や障害者等、ホームページの利用に制約があったり、不慣れであったりする人々が、ホームページで提供される情報や機能を支障なく利用できること。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 支援内容 障害の程度に関わらず、 本人の「やる気」をサポート 在宅勤務に向け、技術的な支援 特定非営利活動法人 ぶうしすてむ 二神 重則さん support 支援団体 支援対象者 竹内さんへの支援 雇用前 様々な講習会を通じて パソコンスキルの向上を支援  ぶうしすてむ主催の「就業希望の在宅重度障害者に対するパソコン講師派遣による指導」(平成18年12月〜平成19年3月)において、竹内さんの自宅に2日間講師を派遣し、DVD編集作業およびパソコン環境の整備に伴う講習を行う。また、平成19年6月〜8月の「大洲パソコン講習会」では、竹内さんに講師として活躍してもらった。講師の経験が、社会に参加し、貢献することの喜びにつながった。この講習会では、会場が自宅から離れていたため、愛媛県大洲ホームの障害者相談員と連携し、送迎や排泄のサポートを行った。  続く「在宅就業を目指す障害者対象のWebデザイン技術者養成」では、e-ラーニングによるWebアクセシビリティに関する研修を行った。併せて家庭訪問を行い本人とのコミュニケーションに努めた。 雇用後 研修会や講習会のネットワークを活かし、 本人の「やる気」をバックアップ  雇用後も竹内さんは在宅勤務のかたわらパソコンのスキルアップを目的にさまざまな研修や講習会などに受講生として参加しているため、その際にぶうしすてむが派遣した講師陣が竹内さんに直接助言、サポートを行っている。 comment  受障してからすぐにパソコンを習い始めましたが、当時は職に就けるとは思いませんでした。きっかけは「ぶうしすてむ」との出会いです。ここで講師の派遣や学習会、HPづくりなどを学び、お仕事ステーションで「まるく株式会社」を知って就職することができました。その間、相談員さんにも支援いただきました。重要なのは「出会い」です。動けば誰かと出会い、何かが起こります。待っているより動くことが肝心です。 ▲竹内 涼さん 雇用先 まるく株式会社への支援 雇用前 障害特性とパソコンスキル、 仕事への情熱を説明  これまでの講習受講の経験や習得したスキル、また障害特性や仕事への意欲をまるく株式会社に説明、平成20年1月から在宅勤務で採用に至る。まるく株式会社の「障がいが軽度でも消極的な社員より、障がいが重度でも積極的な社員を採用したい」という思いに応えた結果となった。 雇用後 会社の対応を信頼し見守る  まるく株式会社では障害者を雇用することを前提とした設備、制度、スタッフが整っているため、会社の対応を信頼し見守るというスタンスである。努力と成果次第で昇給もあり、在宅勤務者の就労意欲の増加につながっている。 comment  竹内さんとの出会いは、頸損の会の方からパソコンで仕事をしたい人がいると紹介を受けたのが最初でした。その後、私たちのアプローチに積極的に応えてくれた一人です。今回の就職は「在宅就労事業説明会」に参加されたのが縁となり、在宅勤務がかないました。運命の女神の前髪をつかもうとする竹内さんの姿勢には心打たれるものがあります。 特定非営利活動法人 ぶうしすてむ 二神 重則さん 支援ノウハウQ&A Q 在宅勤務、在宅就業を進めていく中で、精神的なフォローや孤立化を防ぐために工夫していることがあれば教えてください。 A 在宅勤務、在宅就業の場合、ちょっとした雑談などもないため、どうしても孤立化しやすい傾向にあります。ですから、季節ごとの行事や親善事業などで集まって、お互いの不平や不満も含めた近況を自由に話せる場を提供することが必要です。また、ぶうしすてむでは仕事の熟達した障害者を講師として派遣していますが、障害者が障害者に与えるインパクトは非常に強いものがあります。自分が仕事を教える立場に立つことで、他の障害者が持つ悩みや苦しみを共感してあげることもできますし、講習会がきっかけで障害者同士が知り合いになって、新しい活動の輪が地域に誕生することもあります。精神的なフォローや孤立化を防ぐ一番の特効薬は、障害者同士がもつ「絆」です。その絆を地域の中でつないでいくことが、私たちの役目だと感じています。