雇 用9 Case study 職業能力開発訓練によるスキル向上と 退職後の在宅就業をサポート Profile 支援団体 社会福祉法人大阪市障害者福祉・スポーツ協会 大阪市職業リハビリテーションセンター ●所在地:大阪府大阪市平野区喜連西6-2-55 ●・ 06-6704-7201 _FAX06-6704-7274 ●URL:http://www.v-sien.org/ 【事業内容】  昭和60年に設立し、障害者の職業能力開発施設として活動を開始する。身体障害を対象とした2年課程の情報処理科や知的障害を対象とした1年課程のワーキング・スキル科、在宅就業を支援するバーチャル工房 V−WORKS等を運営している。平成18 年7月に在宅就業支援団体に登録。また、V-SIENという障害者の就労支援ネットワークを運営している。 支援対象者 前川 和喜さん ●在住地:大阪府 ●障害種別:身体障害(1級) ●障害状況:頚椎損傷による両上下肢機能障害。車椅子を使用し、月1回定期通院をしている。自動車による移動ができる。 【これまでの経緯】  高校卒業後、内装の仕事に従事。平成10年に受障し退職。知人の紹介で支援団体を知り、平成14年に3ヶ月間の短期訓練、平成15年から2年間情報処理の能力開発訓練を受講する。在宅就業により実績を重ね、平成19年4月にY社に就職するが、体調不良等により退職。現在は支援団体のバーチャル工房にて在宅就業を行う。 雇用先 Y社 ●所在地:兵庫県 【事業内容】  印刷業、Webサイトの企画・運営を行っている。 雇用のきっかけ  バーチャル工房V-WORKSに請負業務を提供していたY社から、DTPを行う人員が不足していたため、業務内容を理解している前川さんを雇用したいという希望による。 前川さんの雇用状況 従事業務 取扱説明書のレイアウト編集 雇用形態 当初、在宅勤務を予定していたが、業務研修も兼ねて会社において勤務。 正社員 勤務時間 8時45分〜16時45分 業務の 進捗管理 直接、上司に対して報告、連絡、相談。 賃金 月給制 用語解説 「V-SIEN」  障害者が職業知識や技能を修得し、職業人として社会参加できるよう支援する職業能力開発機関(大阪市職業リハビリテーションセンター/大阪市職業指導センター)と就業全般にかかる支援を行う大阪市障害者就業・生活支援センターにより構成される就労支援ネットワークの総称。これらの施設が連携し、障害者の個々の状況に応じた支援ができるさまざまな体制づくりを目指している。 連携 職業能力開発機関 大阪市障害者就業・生活支援センター 支援 支援 障害者 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 支援内容 能力開発訓練施設のノウハウを活かし、 在宅勤務、在宅就業に結びつける 大阪市職業リハビリテーションセンター 情報処理科指導員 池田 泰将さん(左)   第一指導係長 岡本 忠雄さん(右) support 支援団体 支援対象者 雇用前 2年間の能力開発訓練と企業と連携した e-ラーニングにより能力向上  2年間の情報処理科プログラマーコースにおいて、ワープロ、表計算、データベースソフトの訓練を実施。加えて、プログラミング言語であるC言語やHTML、PHPの訓練を行い、ショッピングサイトの作成ができるレベルになった。  訓練修了後は、平成17年4月から体調をコントロールしながら仕事に取り組むことを目標に、バーチャル工房V-WORKSに登録。Y社から提供された取扱説明書の編集業務やWebサイトの作成等を中心に、バーチャル工房への通所と自宅による在宅就業を開始した。また、Y社とバーチャル工房をオンラインで結び、TV会議システムを併用しながら請負業務に必要なDTP関連の実践的な訓練を行った。  併せて、週に1回、支援団体の外部講師であるDTPのプロデザイナーから、レイアウト技術、印刷業界の知識等を指導してもらい、能力の向上につながった。 雇用後 退職後は、バーチャル工房における 在宅就業の中心人物に  Y社からDTP作業を行う人員が不足しているため、前川さんを雇用したいとの希望があった。当初、在宅勤務を目指していたが、業務に必要なスキル研修等が必要であったこと、本人の希望もあったため、会社で勤務することになった。しかし、担当業務を続けることと体調の維持管理を両立することが難しいと判断され、2ヶ月で退職することになった。  退職後、前川さんの体調が回復してから再度、バーチャル工房のメンバーになってもらい、保育園の文集等業務を請け負ってもらっている。現在では、体調に合わせながらも、週に3〜4日、9時30分〜17時の間通所し、在宅就業の中心的人物として活躍してもらっている。 雇用先 Y社への支援 雇用前 在宅就業により本人の能力、人柄を把握  在宅就業の業務を提供してもらっているY社とは、常に連携を取っていた。在宅就業の機会を通じて前川さんの能力をY社が把握することになる。Y社は、前川さんと同様の障害者を雇用しており、障害特性や配慮事項を理解してもらったうえで雇用に至った。 雇用後 前川さんの退職後も、連携は続く  採用後、業務と体調管理の両立が困難との前川さんからの訴えにより、話し合いの場が設定される。休職し、体調が回復してから復帰して欲しいという提案をもらったが、本人と会社の話し合いの結果、退職となった。  Y社は障害者雇用に理解のある企業であり、その後も在宅就業の業務を提供してもらう等、密な連携は続いている。 comment  在宅勤務のメリットは、1つ目は通勤から開放されることです。通勤するのはかなり体力を消耗します。出社できても体調に異変が生じたら意味がありません。2つ目に、パソコンやマウス、机の高さなど自分が使いやすいように設定ができるということです。3つ目は、仕事中、急に体調を崩した場合でも、自宅であれば体調不良への対応がしやすいので安心して仕事に集中できることがあげられます。  一方、デメリットとしては、コミュニケーションが不足しがちなこと、体力的には自分のペースでできるものの、在宅では孤独になりやすいので精神的には厳しい時があります。また、仕事に集中すると時間を経つのを忘れ、体調を崩しかねません。  現在、在宅就業を行っていますが、コミュニケーション不足をなくすために週3日はバーチャル工房に顔を出すようにしています。また、体調の自己管理には一番注意しています。 ▲前川 和喜さん 支援ノウハウQ&A Q 訓練や在宅就業を進めていく上で、外部講師と連携したメリットは何ですか? A 能力開発訓練の一環で外部講師に協力をいただいていますが、最新のスキルや業界の知識を本人だけでなくスタッフも知ることができるのがメリットといえます。  また、企業から業務を受注した場合に、自分達だけで対応が難しい内容については、外部講師から助言をいただいたり、他の専門家の情報を提供してもらったりできることもメリットです。