雇 用7 Case study ホームページ作成に必要なスキル習得を障害者がサポート リーダーを目標に出勤日を増やし、モチベーションをアップ Profile 支援団体 特定非営利活動法人 アイ・コラボレーション ●所在地:滋賀県草津市草津3丁目14-40 ●・ 077(569)4777 FAX077(569)4791 ●URL:http//www.i-collabo.com/ 【事業内容】  平成12年4月に滋賀県脊髄損傷者協会会長ほか3名の有志で設立、活動を始める。ITを用いて障害者と健常者が協力して働くことを理念とし、WEBサイト・DTP・デザイン・プログラム開発・PC講習会などを行っている。障害者自立支援法に基づく地域活動支援センターの運営、管理も行っている。 支援対象者 林 篤伸さん ●在住地:滋賀県 ●障害種別:身体障害(1級) ●障害状況:脊髄損傷による両上下肢機能障害。食事の準備は介助が必要。月に1回、定期通院をしている。 【これまでの経緯】  受傷後、平成12年から生活訓練のために滋賀県立自立支援施設「むれやま荘」に入所。1年間の生活訓練を経て、その後1年間求職活動を行う。むれやま荘の隣で開催されている車イスツインバスケットクラブへの参加をきっかけに、身体障害者福祉協会会長及び脊髄損傷者協会会長並びにアイ・コラボレーションの理事長でもある岡本理事長と知り合い、平成14年にアイ・コラボレーションに採用される。 雇用先 地域活動支援センター アイ・コラボレーション多賀 ●所在地:滋賀県犬上郡多賀町多賀1634-1 ●URL:URL:http://www.ictaga.jp 【事業内容】 支援団体が運営する地域活動支援センター。事業内容は、支援団体に準じる。 ■従業員数:9名 ■障害者の在宅勤務者数:2名 雇用のきっかけ 障害者でもある支援団体の岡本理事長が林さんから就職の相談を受けたのがきっかけ。採用時林さんは、パソコンでインターネットやメールが出来る程度であったが、真面目な性格で努力する意欲と責任感があったため、ホームページ作成に必要なスキルの上達を見込み、採用を決めた。 林さんの雇用状況 従事業務 ホームページ作成 雇用形態 採用された当初は週3日在宅勤務。現在は週1日の在宅勤務、後の4日は事務所において勤務している。 正社員 週5日勤務(月〜金) 勤務時間 10時00分〜17時00分(6時間勤務) (休憩時間 12時00分〜13時00分) 業務の進捗管理 在宅の場合は電話、メール、メッセンジャーも活用し、事務所の管理者が直接把握している。 賃金 時給制 設置機器 パソコン、ネットワーク回線 活用した制度 トライアル雇用制度 配慮した事項 パソコン入力の際に、誤入力を防ぐため消しゴム付きのえんぴつを使い入力している。 ▲林さんが作成した「アイ・コラボレーション多賀」のトップページ ▲キーボード入力時には、市販の消しゴム付きえんぴつを指の間にはさみ使用している。 用語解説 「事業所型共同作業所」  滋賀県独自の制度。障害者に就労の場を提供し、障害者に就労の促進及び社会的、経済的な自立を図ることを目的とした作業所であって、原則として作業所を利用している障害者(以下「利用者」という)のうち2分の1以上の者と雇用契約を締結するとともに、雇用契約を締結した利用者に対して、最低賃金法(昭和34年法律第137号)等に定める最低賃金以上の賃金を支払うというもの。 -------------------------------------------------- 支援内容 本人同様の障害を抱える上司が 障害特性を理解した上で 実践を通じ、上達するまで繰り返し指導 特定非営利活動法人 アイ・コラボレーション 事務局 松村 正俊さん support 支援団体 支援対象者 雇用前 スキルレベルと意欲を確認し 一からホームページ制作を習得できる研修を準備  ホームページ制作で在宅勤務を希望していた林さんのスキルレベルと技術習得の意欲を確認した。  パソコンによるワード、エクセルの操作法は習得していたものの、インターネットに関しては初心者であったため、雇用後に、一からノウハウを習得できる研修をすることとした。 雇用後 リーダーのもと、ホームページ制作の技術を支援 管理者を目指すため出勤日を増やし研鑽  まず、制作ソフト「ホームページビルダー」を使って個人のページを制作する課題を与え、ホームページ制作に慣れることからスタート。  実際の業務では、リーダーのもとで表やアイコン、地図などパーツを作ることから始まり、それらの色・余白などについて具体的な直し指示を与えスキルの向上を支援した。その後、プログラムやデザインやバランスなどに関しても指導、一人でホームページを作れるまで繰り返し訓練を行なった。  将来的には、事務所における管理者であるリーダーを目指している。そのため1年前から事務所への出勤日を2日から4日に増やし、サブリーダーとしてホームページ制作における部下への業務振り分けを林さんに任せるようにした。ホームページ完成後にリーダーから確認及び指導を受ける体制をとり、実践を通し研鑽を積んでいる。 comment  現在週5日のうち1日を在宅で勤務しています。通勤する時間を働く時間に回すことができ、自分の体調に合わせて休憩できる在宅勤務は、体調管理の上でとても助かっています。就職前は、家から出ることが少なかったのですが、アイ・コラボレーションで働くようになって世界が変わり、仕事へのやりがいが生まれ、物事に対してポジティブになりました。これからは、どんな案件にでも応えられようにさらにスキルを磨いていきたいです。 ▲林 篤伸さん 雇用先 地域活動支援センター アイ・コラボレーション 雇用にあたって 在宅勤務と出勤の割合を考慮し、健康に配慮 同じ障害を持った上司が的確に指導  採用前に林さん本人と勤務時間やどういう割合で在宅勤務するかを相談。就職当初は、本人の負担にならないよう週5日のうち3日を在宅勤務に当てた。  同じ上下肢機能障害を持っている上司のもとに配属、本人の障害特性を理解した上で、上司の経験に基づいた的確な指導を行えるようにした。また、在宅勤務の際には、電話の他メールやリアルタイムで応答できるメッセンジャーを使い、出勤して作業するのと同様に業務の進捗管理を行なえるようにした。  この他、継続して勤務するには体力が必要になるため、体力づくり・体調維持のために車イスツインバスケットを奨励している。 ?リーダーの北川さんから、サブリーダーの林さんに的確な指示が与えられる。 comment  移動に掛かる時間が不要になり、就業できる時間が増えること。通勤のために体力を消耗したり、体調を崩したりすることが軽減されること。それらが在宅勤務のメリットだと思います。障害者雇用のためにバリアフリーを検討している企業の方へは、整備費用にお金を掛けずに、在宅勤務できる人材を探すのも一つの手段だと伝えたいです。働く機会を求めている障害者の中に、会社の利益に貢献できる優秀な人材が数多くいると思います。 ▲リーダー 北川 誠さん 支援ノウハウQ&A Q 従業員の多くが障害者であるアイ・コラボレーションでは、安定した勤務を目指すために体調管理で何か工夫していることはありますか? A 正午から午後1時までの休憩時間以外にも、体調に合わせて休憩を取れるようにしています。また、各事務所には障害者のサポートに当たる健常者を必ず1人配置しています。車の乗り降りを手伝ってもらったり、お茶出しをしてもらったり。障害者が精神的な負担にならないよう気兼ねなく頼める体制を整えています。 ・サポート担当者からお昼時にお茶を出してもらう林さん。荷物の運搬を手伝ってもらうこともある。