雇 用5 Case study 雇用前から雇用後にかけたスキルアップ研修と 細やかな企業サポートで在宅勤務が実現 Profile 支援団体 社会福祉法人東京コロニー ●所在地:東京都中野区江原2-6-7 ●・03(5988)7192(職能開発室) FAX_03(5988)7193 ●URL:http://www.tocolo.or.jp/     syokunou/ 【事業内容】  福祉工場、授産施設、グループホームの運営、芸術作品の貸出事業(アートビリティ)を実施。平成18年5月に在宅就業支援団体に登録。インターネットを利用したIT技術者在宅養成講座、東京都ITサポートセンターの運営、在宅での就労支援事 業、有料職業紹介事業なども行っている。 支援対象者 國重 義樹さん ●在住地:東京都 ●障害種別:身体障害(5級) ●障害状況:ジストニアによる体幹機能障害。筋肉の不随意運動と痛みのために長時間起き上がることが困難。自分で車の運転ができる。 【これまでの経緯】  平成18年に病気により営業として勤務していたIT企業を退職。座り作業でも痛みが起きるため、会社において勤務が難しい状態であった。在宅勤務に関する情報をインターネットで検索し、支援団体を知る。平成19年6月末から短期IT講座(基礎)を2ヶ月間受講。平成19年12月から双日株式会社に在宅勤務で採用される。 雇用先 双日株式会社 ●所在地:東京都港区赤坂6-1-20 ●URL:http://www.sojitz.com/jp/     index.html ■従業員数:2,284名 ■障害者の在宅勤務者数:2名 【事業内容】  総合商社として、国内外との取引や事業運営を行っており、機械・宇宙航空、エネルギー・金属資源などの多岐にわたる分野で事業を展開。 雇用のきっかけ  これまで、企業が求める職種や人材に合致する障害者を雇用していたが、「障害者ができること」に焦点をあて、職務の創出や在宅勤務の導入を検討したことがきっかけとなる。 國重さんの雇用状況 従事業務 人事総務部採用課に所属。主に業界内の採用動向、企業内ホームページのダイバーシティ関連情報の収集、メンテナンス業務を行っている。 雇用形態 在宅勤務(2ヶ月に1回程度出社) 契約社員(1年更新) 週4日勤務(月、火、木、金) 勤務時間 9時15分〜17時45分(休憩1時間) 業務の 進捗管理 勤怠管理は、作業開始時と終了時にメールで報告。 業務のメールはCCで複数の担当者が状況を把握するようにしている。 毎週金曜日に週報を提出。必要に応じて電話で打合せ。 賃金 月給制。通信費、光熱費として月7,500円支給 設置機器 パソコン、プリンタ、インターネット環境、仕事に適した机、いす、本人にあった什器 購入、設置費用 会社が購入し、貸与 メンテナンス インターネット、パソコンの不具合は会社で保守 活用した制度 特定求職者雇用開発助成金、障害者介助等助成金 (在宅勤務コーディネーターの配置) 配慮した事項 体調や治療に合わせた柔軟な勤務時間の設定 自宅のパソコンや什器等のレイアウト 車による出社を認める(通常は公共交通機関で出社) 用語解説 「ダイバーシティ(Diversity)」  性別、人種、国籍、宗教など異なる背景や価値観を持つ人々が一緒に働き、生産性を向上し、創造性を高めていこうとする考え方。  社会倫理として「機会均等」を企業の人材戦略として前向きに捉えなおすもので、近年、企業において女性、若年者、高齢者、障害者などの多様な人材を登用する動きがみられている。 ------------------------------------------------- 支援内容 在宅勤務導入に向け、 職務の検討から待遇面まで 1つ1つ着実に企業をサポート 社会福祉法人 東京コロニー職能開発室 課長 堀込 真理子さん support 支援団体 支援対象者 國重さんへの支援 雇用前 ホームページのスキル講習の実施と 体の負担を考えた作業環境を整備  前職を退職後、在宅勤務を希望し、東京コロニーに相談がある。WEB制作の技術を身に付け、在宅勤務を目指すために平成19年6月末から2ヶ月間(1日4時間、週5日)、在宅で短期IT講座(基礎)を受講してもらった。主にホームページ制作の言語であるHTMLやスタイルシートを学習。  平成19年8月に双日株式会社から在宅勤務の相談を受け、職歴もあり社会性の高い國重さんを推薦することに。その際に、企業の仕事内容の説明や本人の希望を確認し、勤務時間などの調整を行う。  また、在宅勤務開始に向けて、自宅を訪問し身体にあった什器の設置、レイアウトといった作業環境の整備を行い、平成19年12月に採用に至った。 雇用後 実務に対応するためのレベルアップ教育  就職後、業務に対応するためのレベルアップ教育の一環で、業務と並行して勤務時間内に支援団体の短期IT講座(応用)を4ヶ月間(1日4時間、週5日)受講してもらった。ウェブページの作成やデザインで使用するFireworks、Dreamweaverのスキルについて講習を行う。  また、日本語入力をサポートするソフトの情報提供をして、業務遂行の際に活用してもらった。 comment  東京コロニーには、就職支援やe-ラーニングによる講習を実施してもらい感謝しています。基礎と応用のIT講習が今の仕事を進める上で大きな自信になっています。  会社もホームページの制作にとどまらず、在宅勤務でどんな仕事ができるかなど自分の経験を踏まえた提案を受け入れてくれていることに感謝とやりがいを感じています。  これから在宅勤務を目指す際には、自分の障害を会社の方に分かってもらえるように伝えることが大切だと思います。また、在宅で一人で仕事を続けることは寂しさや不安を感じるときもあります。そのときは、会社の方に相談をしています。普段から気軽に電話できるようコミュニケーションを図っていくことが重要と考えます。(國重さん) ▲堀込さん(左)、國重さん(中)、葛西さん(右) 雇用先 双日株式会社への支援 雇用前 先行企業の事例やマニュアルを活用し、 ノウハウを伝授  ハローワーク品川から双日株式会社が在宅勤務導入を検討している旨紹介を受け、「在宅勤務障害者雇用管理マニュアル」等資料をもとに在宅勤務に関する情報提供を行う。職務の選定から支援制度の活用など、マニュアルを参考にしながら着実に在宅勤務の導入を進めていった。  また、職務の選定の参考となるよう、在宅勤務で行う職務の提案や國重さんのスキル、経験を伝えるとともに、待遇等の設定や契約書の作成について助言を行った。 雇用後 節目節目のコミュニケーションで 関係性を維持  國重さんの社会人としての経験と講習を通じて習得したスキルにより在宅勤務は順調であるため、特に直接的な支援が必要な場面はないが、平成20年4月に企業から担当者が異動したことの連絡をいただき、節目節目のコミュニケーションで関係性を維持している。 comment  当社では、在宅勤務であっても、会社において勤務していても、双日の一員としてプロジェクトに参画していること、会社に貢献していることを実感してもらえるようフォローすることが必要と考えています。  本人の体調の許す範囲で、コミュニケーションをとる機会を設けたいと思っています。同じ課のメンバーにとどまらず、部全体の会合にも参加していただき、人間関係を築く場の提供をしていくことが大切と考えています。 ▲人事総務部ダイバーシティ推進課 葛西 英文さん 支援ノウハウQ&A Q 企業に在宅勤務導入の際の職務の選定について、どのようなアドバイスをしていますか? A ただ「作業」単体を切り出せばいいというものではなく、その「作業」が企業にとってどのような意味があるのか、仕事全体の流れとしてどのような位置にあたるのかを、在宅勤務者に説明するとともに、企業担当者がそのことを理解して接していただくよう、助言をしています。  それは、「作業」単体のみを繰り返しこなすだけでは、在宅勤務者のモチベーションは維持しづらいからです。自分の行う作業がどのように会社に貢献しているのかを実感することで積極的に業務に取り組めますし、会社の業務を理解することで他の従業員ともコミュニケーションが図りやすくなるというメリットがあります。