雇 用2 Case study 100時間のパソコン講習と企業の実務を 体験することで、より実践的な研修を実現 Profile 支援団体 特定非営利活動法人トライアングル西千葉 ●所在地:千葉県千葉市稲毛区小仲台2-6-1 京成稲毛ビル205号 ●・043(206)7101 FAX043(206)7153 ●URL:http://www9.plala.or.jp/     triangle_nishi/ 【事業内容】  千葉市認可の地域活動支援センターとして、視覚障害者を中心としたパソコン講習の開催からスタートし、テープ起こしやホームページ制作、名刺制作などを行う作業所を開設。平成15年に法人化。平成16年からは千葉県障害者ITサポートセンターの運営、平成18年に在宅就業支援団体として活動を行う。 支援対象者 Aさん ●在住地:東京都 ●障害種別:身体障害(1級) ●障害状況:黄斑(網膜の中でものを見る中心となる部分)変性による弱視。 【これまでの経緯】  あんまマッサージ指圧師、鍼灸師の資格を持ち、国立障害者リハビリテーションセンター理療科卒業後、マッサージ師として4年、ヘルスキーパーとして4年勤務経験がある。平成19年8月にC社にヘルスキーパーとして採用される際にパソコンを使用しての事務処理が必要となったため、通常業務と並行して支援団体でパソコン技術の研修を受けた。 支援対象者 Bさん ●在住地:千葉県 ●障害種別:身体障害(1級) ●障害状況:網膜性色素変性症の視覚障害を持つ。日常の移動には白杖を使用。 【これまでの経緯】  あんまマッサージ指圧師、鍼灸師の資格を持ち、盲学校卒業後、マッサージ師として9年、ヘルスキーパーとして8年勤務した経験がある。求職中にパソコン講習を受け、その後ハローワークの紹介で平成19年8月からC社にヘルスキーパーとして採用された。 雇用先 C株式会社 ●所在地:東京都 【事業内容】  ITソリューション 雇用のきっかけ  社員の福利厚生のためにヘルスケアルームを開設し、ハローワークからAさん、Bさんを紹介され、ヘルスキーパーとして採用。業務上パソコンを利用した事務処理が必要なため、支援団体に講習を依頼した。 Aさん、Bさんの雇用状況 従事業務 ヘルスキーパーとして従業員にマッサージの提供。予約スケジュール管理やカルテ管理など、社内LANを使用しての事務処理。 雇用形態 会社において勤務、契約社員(1年更新) 週5日勤務(月〜金) 勤務時間 10時00分〜19時00分等シフト勤務(8時間) 賃金 月給制 設置機器 社内LANに接続したパソコン(ヘルスキーパー業務に付随する事務処理、社内連絡のためのメールで使用)、パソコン画面の読み上げソフト(JAWS) 配慮した事項 事務処理を行う際に必要な支援機器(パソコン画面の読み上げソフト)の整備 用語解説 「ヘルスキーパー」   ヘルスキーパーは、企業に雇用され、職場においてマッサージ、鍼、灸、運動療法などの物理療法を行って、従業員の疲労の回復や心身の変調を調整し、業務の能率向上と従業員の健康の保持、増進に役立つような仕事をしている人たちのことをいう。 ----------------------------------------------------------- 支援内容 ヘルスキーパーの業務と並行して、 企業の実務に即した内容と 一人ひとりの障害状況に合わせた講習を実施 特定非営利活動法人 トライアングル西千葉 理事長 鈴木 信一さん support 支援団体 支援対象者 Aさん、Bさんへの支援 雇用前 視覚障害者を対象としたパソコン講習を 開催し、求職者のスキルアップを図る  トライアングル西千葉では、視覚障害者を対象としたパソコン講習を実施しており、求職中だったB さんは平成19年から数週間、タイピング練習、文章作成、電子メール、インターネット、表計算ソフトの作成などのスキル習得のために参加していた。 雇用後 ヘルスキーパーの業務と並行して 週3回のパソコン講習を6ヶ月実施  ハローワークの紹介によりC社への雇用が決まったAさんは、パソコンの経験がなかったが、業務上パソコン使用が必須だったため、C社から依頼を受け、ヘルスキーパーの勤務と並行して研修を行った。同じ時期にC社への採用が決まったBさんに対しても社内業務に合わせたパソコン講習の依頼があり、Aさん同様の研修を行った。  二人に対しては6ヶ月に渡り、週3回午前中2時間の研修を実施。音声読み上げソフト「スクリーンリーダー」を利用して、社内LANへのアクセス方法、ワープロ・表計算ソフトの操作方法、outlookを使用しての予約スケジュール管理、メールの送受信、インターネットの検索技術などの訓練を行った。弱視であるAさんに対しては、目への負担を減らすため「Zoom Text」という拡大ソフトを使用した。合計100時間の研修を終える頃には、業務に支障ない程度のパソコン操作ができるようになり、一人で日常業務をこなせるようになった。  研修終了後も、Bさんは休日を活用して自主的に支援団体の講習受講を継続。更なるパソコンスキルの向上にむけて勉強を続けている。 ▲Zoom TextでのWord拡大(4倍)。マウスカーソルのある位置を拡大しながら追従する画面モードもあり、使いやすい様に設定することが可能 雇用先 C株式会社への支援 雇用前 採用後の研修方法などのアドバイス  C社には、これまでもヘルスキーパーとして働く視覚障害者がいたが、パソコンについては社内の研修のみで、支援団体に協力を求めたのは二人が初めてだった。そのため、採用後の研修方法について助言を行ったり、ハード面の整備だけでなく、同じ企業で働く一般社員によるサポートも重要だというアドバイスを行った。 雇用後 実際の業務の流れを一緒に体験することで 問題となる点を発見し、改善していった  Aさん、Bさんと一緒に実際に事業所に出向き、業務の流れを体験する中で、業務遂行上課題となるポイントを確認しながら、作業手順の変更やパソコン操作方法を支援した。  社内LANを活用しているため、情報伝達に関する環境は整っているが、今後システム変更が生じた場合に対応できるよう、更なるスキルアップが必要となる。現状は電話でのサポートが中心となっているが、雇用管理をサポートするため、今後も依頼があれば企業訪問を行っていく。 comment  家庭の事情で前社を退職しましたが、次の職への進展もない中、一つでも多く手に職と考え、友人の紹介でトライアングル西千葉のパソコン講習へ通うことになりました。組織に属して仕事をする上で、パソコンは当然必要となると感じていたからで、ぜひ身につけたいという気持ちがありました。  パソコンとの出会いは、仕事はもちろん、日常生活においても幅が広がり、これからも私にとって必要不可欠なものであることは言うまでもありません。        (Bさん) 支援ノウハウQ&A Q 視覚障害者にパソコンの助言をする際に、配慮する点を教えてください。 A 視覚障害者は場所の認識をすることが苦手なため、助言を行う際には「ここ」「そこ」などではなく、時計の文字盤を使い「3時の方向に」など、より具体的に伝えるよう心掛ける必要があります。  また弱視や色覚障害など、障害の程度や内容によって一人ひとり見え方が違うので、文字の大きさを変えたり、画面の色のコントラストを変えるなど、その人が一番使いやすい環境で行えるような配慮が必要です。 ・講習はマンツーマンで行うため、一人ひとりの障害の程度に合わせた内容で受けることができる