雇 用1 Case study 個人の経験に応じたパソコン講習を実施 研修会場の提供で支援対象者と企業の交流が促進 Profile 支援団体 特定非営利活動法人札幌チャレンジド ●所在地:北海道札幌市中央区北5条西      6丁目 札通ビル8階 ●・011(261)0074 FAX011(219)1811 ●URL:http://www.s-challenged.jp/     index.html 【事業内容】  平成12 年に任意団体として設立。翌年NPO法人化。自立を目指す障害者の就労支援を行っている。また、就労継続支援A型事業所、札幌市の障がい者ITサポートセンター事業、パソコン講習会に加え、個人宅への訪問講習、福祉施設への出前講習などを行っている。平成18年5月に在宅就業支援団体に登録。 支援対象者 Tさん ●在住地:北海道 ●障害種別:精神障害(2級) ●障害状況:統合失調症による精神障害。月に1回定期通院をしている。 【これまでの経緯】  大学を中退し、専門学校で情報システムを学んだ後、ソフトウェア開発の仕事に従事。退職後、平成18年から在宅就業を行うために、支援団体にスキル情報の登録を行う。平成19年6月からエキスパート養成講座を6ヶ月間受講。並行してホームページの作成業務で在宅就業を行う。平成20年8月からニフティ株式会社に就職。 支援対象者 Mさん ●在住地:北海道 ●障害種別:身体障害(1級) ●障害状況:肥大型心筋症、心室細動による心臓機能障害。月1回の定期通院をしている。 【これまでの経緯】  高校卒業後、営業職やタクシー乗務員の経験を持つ。パソコン講習に興味を持ち、ホームページで支援団体の活動を知る。平成19年6月からワード、エクセル、HTMLに関する長期就労訓練を1年間受講。併せて平成19年7月頃からホームページ作成・更新作業、パソコン講習会の講師の補助として在宅就業を開始。平成20年8月からニフティ株式会社に就職。 雇用先 ニフティ株式会社 ●所在地:東京都品川区南大井6-26-1       大森ベルポートA館 ●URL:http://www.nifty.co.jp/ ■従業員数:603名 ■障害者の在宅勤務者数:4名 【事業内容】  昭和61年に「株式会社エヌ・アイ・エフ」として設立。平成3年に社名を「ニフティ株式会社」に変更。個人向けインターネットサービスとして「@nifty」、法人向けサービスとして、インターネット接続・ホスティング・アウトソーシング等を行っている。 雇用のきっかけ  障害者雇用を検討していくなかで、インターネットサービスを行う企業としてネットを活用した雇用を創出したいと考え、在宅勤務の導入を決定。人材確保のために、東京近郊に限定せず、地方在住の障害者を雇用しようと、札幌チャレンジドにコンタクトをとる。Tさん、Mさんを推薦してもらい雇用に至る。 Tさん、Mさんの雇用状況 従事業務 マーケットコミュニケーション室に所属し、サイトの分析(自社と他社のサービスの比較等)行っている 雇用形態 在宅勤務(契約社員) 週5日勤務(月〜金) 3ヶ月に1回程度出社 勤務時間 9時00分〜17時00分(7時間勤務)、昼休憩1時間 業務の進捗管理 本社勤務の直属の上司にメールで作業開始、終了を報告。また、日報、週報、月報と作業のチェックシートを記入して報告。 賃金 時給制 設置機器 パソコン、ウェブカメラ、メッセンジャー 購入、設置費用 機器は企業が購入し、貸与 活用した制度 トライアル雇用 配慮した事項 本社に出社した際には、疲労が蓄積しないよう、オリエンテーション等余裕のあるスケジュールを設定している。 ▲札幌チャレンジドの「就労支援制度(スキル登録等)」を紹介したホームページ ------------------------------------------------- 支援内容 支援対象者、企業双方と関わることで安心感を与える 札幌チャレンジドの理事・相談員の佐藤美由紀さん(左)、理事・事務局長の飯村富士雄さん(中)、事務局・運営委員の佐藤美貴さん(右) support 支援団体 支援対象者 Tさん、Mさんへの支援 雇用前 ホームページ制作に必要なスキルに 特化して訓練  札幌チャレンジドのホームページにスキル登録(ホームページを介して自分のスキルを登録し、スキルにあった在宅就業を行う)し、既に在宅就業を行っていたTさんであるが、ホームページ作成に必要なデザイン力を高めるために平成19年6月から6ヶ月間(毎週土日の10時〜16時)エキスパート養成講座を受講してもらった。フォトショップやイラストレーターの技術を身に付け、ホームページ制作業務で在宅就業を行うこととなった。 インターネットの基礎から ビジネスマナー講習までじっくりサポート  Mさんに対しては、平成19年6月から長期就労研修を実施(週2日、10時〜16時)。インターネットの活用経験が少なく、基礎的な内容から講習を開始。ワード、エクセルの講習を3ヶ月間実施した後、HTMLを学び、ホームページ更新の技術を身につけた。1ヶ月経過したあたりから実践的な経験を積んでもらうために在宅就業を開始した。週2日の講習以外は、支援団体に通所してもらい、講習会の補助スタッフ業務やホームページ更新作業の請負業務に加え、自己学習に取組んでもらった。また、企業の面接会が行われる時期には、外部の講師を招いてビジネスマナーの講習を実施。これまで就労経験のあるMさんであるが、改めて企業で必要なコミュニケーションを学ぶ機会になった。 雇用後 研修とコミュニケーションの場を提供  採用後は、札幌チャレンジドの事務所を会場として3ヶ月に1回、本社より社員が訪問してスキルアップ研修が行われている。研修講師は、ニフティ株式会社の社員が行うが、研修修了後は、札幌チャレンジドのスタッフも合流し意見交換を行っている。  北海道では、Tさん、Mさん以外にもう1名在宅勤務を行っている障害者がいる。3人が一同に介して意見交換する機会があることで、互いに励ましあいモチベーションの維持につながっている。 comment 札幌チャレンジドで行った講習の知識が参考になり助かりました。在宅勤務は、自分の体調に合わせて仕事ができるので良かったです。仕事や体調については自己管理をしていくことが在宅勤務では大切です。(Tさん) 通勤は自分にとって負担が大きかったので、通勤をせずに仕事することができたのは良かったです。会社の方に自分の体調や障害を理解してもらえるようお伝えしていく事も大切だと思います。(Mさん) 雇用先 ニフティ株式会社への支援 雇用前 パソコン講習の内容が企業の目に留まる  ニフティ株式会社が在宅勤務者を募集していることをハローワークを通じて札幌チャレンジドに情報提供があった。 企業にとっても、支援団体のパソコン講習の内容が在宅勤務に必要なスキルに適っていると判断。そこで支援団体から、Tさん、Mさんを推薦することに。二人の障害上の配慮事項を伝え、トライアル雇用を活用しての採用となった。 雇用後 在宅勤務者にとって 拠点のあることが企業の安心感に  ニフティ株式会社における在宅勤務者への教育訓練は、e-ラーニングにより行われる。しかし、直接顔を会わせて打合せをしないと業務上のニュアンスが伝わらないことがあり、3ヶ月に1回程度、在宅勤務者が本社に出社している。  加えて、企業の担当者が札幌に出張し、在宅勤務者の研修を行う際には、支援団体の事務所を会場として提供している。 本社から離れた北海道に在宅勤務者が相談できる機関があることは、企業にとっても安心感につながっている。 comment  Tさん、Mさんのことをよく知っている札幌チャレンジドの存在は企業にとって安心感を与えてくれます。  当社でも、本社から遠く離れた場所での障害者の在宅勤務が初めてであったため、導入にあたっては札幌チャレンジドに様々な質問をさせてもらい、それにすぐに答えていただいたのが心強かったです。  今回、同時期に複数名の在宅勤務者を雇用しました。導入期は大変でしたが、在宅勤務者同士、同期のようなつながりができ、コミュニケーションが図られていることが結果としてよかったと思います。 ▲ニフティ株式会社 コーポレート本部副本部長田代 彰さん 支援ノウハウQ&A Q 貴法人で就職支援として力を入れていることは何ですか? A 当法人では、在宅勤務や在宅就業に限定しているわけではなく、多様な就労につながるようサポートしています。また、サービス対象を特定の障害に限定していません。  現在では、聴覚障害者や視覚障害者のパソコン講習、ALSなどの病気のために手足を思うように動かすことができない重度障害者への「意志伝達装置」の講習等も行っています。  また、会社で勤務するための支援もしていますので、ハローワークや障害者職業センター、民間の人材派遣会社とも常に連携をしています。